歴史ある境内と、そこに続く神社を取り巻く森。その敷地に溶け込むように、大きな木を模った滑り台があります。さらに、とても遊び応えのある大迫力の遊具も待っています。子どもと遊びに出かけて「ここはいいな」と思える場所をご紹介しています。
静岡県焼津市にある元焼津公園の大型遊具は、かなり珍しいものです。長く続くネットトンネルはまさにトルネード、高く上って下りるのが2回転分、ひとつひとつが横に並ぶ形で続いています。
スタートからゴールまで長い道のりながら、何しろショートカットがない容赦なさ。ただし、臆することはない! と言えるのはネット遊具ならでは。細かい網の目にしっかり掴って、じっくりと行けば攻略は可能なハズ。
けれども確かに年齢によっては、かなり苦心することも、くじけそうになることも、あるかもしれない難易度にみえます。著名な焼津神社と公共施設のある一角には、公園の基本的な遊具もあります。大きなほうでも滑り台については、比較的気軽に遊べるものです。
遊具の数も種類も多くはない公園ながら、とても特徴がある元焼津公園。やはりトルネードな遊具は気になりますから、そこもじっくり見ながらご紹介してみます。
子どもが大型遊具で遊べる 元焼津公園をしっかり解説!
焼津神社に祀られているのは日本武尊(=倭建命、やまとたけるのみこと)。日本書紀や古事記に登場する日本武尊は第12代景行天皇の子で九州で熊襲を討伐したのち、中国地方で活躍。さらに東国の蝦夷の平定に向かったとされています。
この地で大活躍の日本武尊を祀る焼津神社
日本武尊と焼津の関係は東国で受けた火攻めのエピソードにあるといいます。この時、草をなぎ倒した働きで名づけられた草薙剣と、迎え火を駆使して返討を果たした活躍から守り神として祀ったのが焼津神社だということです。
また焼津の名前もこの時からだとも言われます。原典である日本書紀や古事記が書かれた遥か前の出来事で、ふたつの書物の内容も相違があることもあり、どこまでが事実に即したお話なのかは分かっていません。そうであっても、焼津神社はその頃の創建で409(反正天皇4)年からだと伝わっています。
夏休みの頃、名高い焼津神社荒まつりは大迫力!
少なくとも毎年8月12・13日に行われる例大祭は1千年の歴史があるとされます。荒祭りとして名を馳せる現在のようになったのは、焼津港から江戸の深川に材木を運び出すときの木遣り歌がきっかけ。神輿の先頭の獅子に合わせて歌われるようになったことが始まりと記されています。
徳川家康の建てた社殿が残る鎮守の森と一体化した元焼津公園
また境内の本殿は徳川家康が建てさせたものです。天下を手中にした家康が1603(慶長8)年に、今川家に続き駿河の国のなかで手厚く信仰したことが分かっています。
元焼津公園は焼津市が管理する公園です。しかしながら、訪れた感じとしてはまるで神社の一部。歴史ある神域と一体感がある公園になっています。
スーパートルネードな大型遊具はとりあえず正式な名前なし
そういったことで元焼津公園の特徴は、信仰を集める焼津神社の鎮守も森との一体感です。そしてゆったりと配置された遊具の中で大規模なふたつは、鎮守の森との一体感を損なわない木質系の質感が意識されています。
子供と無料で楽しむハイライトといえるネット遊具。相当な大きさ、そして長さがあります。スタートからゴールまで一貫してリングをネットで繋いだネットリングトンネルの形をしています。
それがうねりながら大きく、円を描くこと2回。旋回は横に並んで連続しています。細かいネットは「落ちない」ということはもちろん、小さな手足でも手掛かり足掛かりとなり易い、少しくらいのことなら柔らかく受けとめて貰える、などの安心のメリットをもたらしてくれます。
そして、その上で固定された階段や梯子などとは違う不安定さも楽しめます。掴って上る時には当然揺れます。だからこそ一層しっかり掴る、踏ん張ることが求められ、アスレチック遊具の意味合いも強くなります。
かなりの傾斜を上ったり、下りたりする部分もふくまれますし、ねじ曲がってもいます。中を通る時はそれもあって、随分タイトに感じられるハズです。
焼津の中心市街地付近ながら自然に溶け込んだ様子の公園で、この遊具明らかに想起させる物があります。時には大蛇であり、場所柄から時には竜でさえありえます。もっとも大蛇といっても、世界最大といわれるアミメニシキヘビやアナコンダなどでもここまでの大きさはないでしょう。
イメージされているとしたら大蛇は大蛇でもオロチのほう。竜と同じように空想上の怪物です。草薙剣は出雲の八岐大蛇(やまたのおろち)を素戔嗚尊(すさのおのみこと)が倒した際に手に入れた天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)だとされています。この剣は焼津での活躍で、別名を得ることになったというのが日本神話の世界です。
皇位継承の証として天皇が受け継ぐ三種の神器のひとつ草薙剣。継承されてきた本物はいまでも名古屋の熱田神宮のご神体となっています。
八岐大蛇の尾から取り出された剣は天照から天孫降臨の際にニギギに渡されたこと。その後、伊勢神宮に置かれていたものが、日本武尊の東国遠征の際に授けられたこと。尾張で妃を娶り、最後の遠征となった伊吹山への進軍の際に剣は妃のもとに残されたこと。そういったエピソードが残されています。妃の元にあった剣を祀ったのが、熱田神宮の創建の由来でもあります。
この世にあるたった3つの神器のうちのひとつ、その草薙剣の活躍のハイライトが縁起の焼津神社。そこにあるこの遊具、特異な形ながら雰囲気はいかにもピッタリです。そして例え難易度が上っても、この形にしたかった思いも伝わって来るようです。
木の遊具の管理の難しさ、それでも使いたい良いところ
林間の遊具といえば素材からして木など天然素材が似合います。ところが管理はとても難しくなります。例えば同じ静岡県の駒門公園。
著名企業が立ち並ぶ工業団地にある森の中の遊び場です。
いまでも魅力は残っているとはいえ、以前はもっと、とてつもない迫力のある大型アスレチックがあった公園です。最深部には谷間を渡る籠渡りのロープウェイがあったのです。
籠渡りの遊具は同様の物で事故があったことから、各地で撤去の流れになりました。すべてが基本木製であったことによる老朽化もあって、駒門公園では籠渡りの撤去に限らず、遊具の置き変えも進んでいます。これはこれで面白いのですが、独自の魅力が薄れたのも残念ながら事実です。
元焼津公園の螺旋ネットトンネルも、天然素材を多く使っている遊具。鎮守の森とマッチはするものの、耐久性の不安はつきまといます。焼津神社の由来にもピッタリなイメージの遊具だけに維持、補修されながらずっと遊べることを願いたいです。
ともあれ、まさしくスーパートルネードとでもいいたくなる大迫力のこの遊具、そんな大げさな命名を頂くこともなく、神域に調和して名もなくたたずんでいます。そんな地味さからは考えられない楽しさだけは折り紙つきです。
木を取り巻く木肌の滑り台には下りの種類が!
元焼津公園のもうひとつの大型遊具は滑り台。やはり雰囲気にマッチした木の質感を持ったもの。上ったところからも木が突き出ています。写真では本物かどうかは見分けがつかないでしょう。これは造形物です。
あらゆる方向に滑れるのが特徴です。
木の造形物が立っているサイドからは3つの方向へ滑れます。仕様はどれもほぼ同じです。コンクリート製の短い滑り台になります。
上りはやや難しげな一本橋(一本柱?)のものか、緩やかな梯子状のもの。階段ではないです。小さな子どもは梯子を両手を使って上ることになるでしょう。
くぐり抜けるサイドには滑り台がひとつ。これで四方どちらでも、滑り下りて構わない訳です。
飛び抜けた迫力などはありません。ただやはり周囲と調和した雰囲気がよい感じです。上りが単純でないところ、四つの方向に滑れること、合わせて見掛け以上の遊び甲斐がある遊具です。
基本遊具が揃うエリアもゆったり
迫力も特徴もある大型遊具は2点になります。他にもゆったりと設置されている基本遊具といえるものがそろっています。ブランコも4連のものがひとつ。
滑り台はよくあるステンレス製のものです。上り方が一般的な梯子階段だけでなく、両脇のカラフルなリングも利用できるのが面白いところ。
よじ登って滑る方は、ちょっとお兄ちゃん、お姉ちゃん向けになるでしょう。
通りに抜ける道には鳥居がたっています。こちらは住宅街の道に通じています。まさに裏参道そのものな雰囲気。境内といってもいい雰囲気の中、ベンチも用意されています。
神社参道横には相撲の土俵、焼津市の体育館、道路の向かいと裏手には広いグラウンド
表通り側には大鳥居があります。向かって右側がスーパートルネード遊具、参道を挟んで左側には焼津体育館があります。
珍しいものですからこれはと思うでしょう。体育館の手前でやはり目立つのが相撲場。屋根付きの本格派。普段はシートがかぶせてあり、ちょっと相撲をという使い方ではないです。
焼津市には相撲連盟もあり、相撲の市民クラブなどが練習に使っています。例えば、焼津すもうクラブからは大相撲の力士も排出しているとのこと。土俵は隣の体育館の管理ではなく、独立した市営の施設になっています。
焼津体育館には卓球室が!
そして、焼津体育館のほうにはバスケットボール、バレーボール、テニス、卓球、バドミントン、柔道などのために用具や畳の貸出があって、いろいろなスポーツを楽しめます。
とはいえ焼津市にはシーガルドーム(焼津市総合体育館、西焼津駅付近)があり、比べれば規模も小さく、古びた感じにも見えます。そんな中注目すべきなのは卓球室。
ホールのほうに卓球台をだすのではなく、卓球の専門スペースが常設されていて、とても格安で遊べるようになっています。年齢によっては元焼津公園を訪れた時の遊びとして、加えて検討してもいいでしょう。
卓球室利用料金:午前、午後、夕方のおのおの1時間30分の間1台150円
体育館の前の通りを渡ると焼津中央広場というグラウンド。
焼津神社の裏手には元焼津公園のグラウンドがあります。
元焼津公園を訪れるには(アクセスについて)
住所:静岡県焼津市焼津2丁目7番
焼津駅も駅前の商業地もすぐ近く。周辺は市街地で道路沿いには商店も並びます。公園での遊びの前や後の活動、おやつや食料の調達にも、とても便利な公園です。
【自動車を利用する場合】
駐車場:無料(10台)
最寄インターチェンジ:東名高速道焼津(約10分)
東名高速道路を降りたら、そのまま県道81号線を焼津駅周辺の市街地方面に向かいます。焼津神社の社殿近く、園内に駐車場があります。新東名の場合は藤枝岡部I.Cを利用します。
平日などは焼津神社の駐車場を利用させてもらうようで、その旨案内がありました。元焼津公園駐車場の隣が神社の駐車場。滑り台とスーパートルネードは反対側の隣です。
焼津体育館を利用する場合は建物の前と、鳥居前の道を渡ったところに体育館の駐車場があります。
【公共交通機関を利用する場合】
最寄駅:東海道本線焼津駅徒歩約10分(800 m)
焼津駅からも近いです。市街地を歩いて向かって問題ないハズです。
焼津駅前のしずてつジャストライン焼津循環線(駅前通り側4番のりば)からバス便で焼津一丁目もしくは西小学校前停留所まで乗車しても構いません。ただし、公園前にバス停留所はないので、あまり意味はないように思います。
まとめ:なにかと気になる焼津の街、子どもとの遊びで基本はスーパートルネード!
日本武尊の神話にある当地での火攻め。簡単に火をつけたと言いますが、実はそんなに簡単な事でありません。藁でも積んでいたならまだしも、草原を猛火で覆ったというのは神話だからといってしまえばそれまでです。
焼津といえば水産業、大きな漁港があることでも知られた場所です。お礼品数日本一を誇るのが焼津市のふるさと納税。公式サイトでも、目玉はやはりかつおやまぐろ、桜エビ、シラス、金目鯛など水産品です。
関連リンク:焼津市公式ふるさと納税サイト~お礼品数日本一~
生シラスで知られる用宗漁港は大崩海岸を隔ててお隣です
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そしてこの港町には源泉があります。やいづ黒潮温泉は市内8ヶ所に給湯する天然温泉。焼津市では地下1,500 mの地層から天然ガスと一緒に源泉温度50度の温泉が噴出しているのです。
そもそも天然ガスは以前から利用されており、事によってはいにしえにどこかで噴出していてもおかしくありません。天然ガスの採取は海岸近くで行われていたという話があります。焼津の故事は周囲からなぜか燃え上がる地が見えたりした事実が、伝わってできた可能性があります。
元焼津公園のスーパートルネードや由緒ある焼津神社だけでなく、何かと気になる焼津の街。子どもと遊ぶついでに楽しみたいことも一杯のようです。