著名人に死亡者がでたことで危険性が一気に周知された感があります。新型だからこそ、未知のことが多く、治療薬もないまま対応に苦慮しているコビッド-19(新型コロナウイルス感染症)です。集計に問題があったという厚生労働省による国内の発生状況。
発覚後に修正された国内事例のデータを改めてみても、PCR検査陽性者は検査実施人数の8.5 %に過ぎません。PCR検査を受けている人は、極めて疑わしい症状だった方です。それであっても1割にも満たないのです。(入院が必要だったのは、総人口の約0.0005%)
反面、判然としていないことも多く、検証を待たねばならないこともあるとはいえ、それは特定の条件のみに当てはまるリスクと考えられます。それをしっかり把握するとしても、大前提となるのは、この疫病は基本的に治癒するということです。
扇動的な報道もみられる中で、抗体はできる! とか免疫の仕組みは抗体だけではない! といったことをご説明して、まずは少し安心して頂きたいということ、今後のためには確かな判断材料になる疫学調査を徹底すべきということ、お伝えしてあります。
関連リンク:北里研究所・北里大学プレスリリース
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して感染抑制能(中和能)を有するVHH抗体の取得に成功
抗体はできるということに加えて、それを治療や診断に利用する足掛かりとなる研究なども進んでいます。北里研究所の発表などはとても注目したいものです。抗体が体内でできるばかりでなく、それを生産可能な形で人工合成して、効果が認められたというものです。
錯綜する情報の中、よい判断材料はないのか、探してお伝えしたいと思っている本田耀一郎です。今回は免疫について、安心して生活する上で、だから期待できるとよく分かるように、さらに網羅的にひととおりをまとめてみます。
概略と結論で簡潔にいきますので、興味を持った用語などがあったら調べる足掛かりにして頂ければと思います。基本的には言葉を知らなくとも分かるようにします。ただ、あまり作用機序までは触れないようにします(学生や研究者でなければ必要ありません)。
まず待ち構えるのが自然免疫
免疫の働きをする細胞は、すべてが造血幹細胞から分化して骨髄で作られています。
赤血球(肺から酸素を細胞に届け、2酸化炭素を回収するコンテナ)
血小板(血管が傷ついた時に、そこに集まり血栓となり1次止血)
白血球(いろいろな機能で免疫を司る免疫細胞の総称)
体重の8 %ほどになる血液のうち、45 %ほどが血液細胞、55 %ほど血漿成分になります。血漿は90 %ほどの水分に栄養、血液の機能を維持する成分が含まれます。血管が正常ならば、赤血球や血小板は外に出ていける大きさではありません。
血管網は体全体で循環系になっていて、原動力は心臓の拍動です。そして血漿は白血球なども含めて血管から一部染み出ていて、細胞を包む組織液になっています。組織液はリンパ管で回収される仕組みがあり、体内の老廃物も運びます。
リンパ管の中でリンパ液となり周囲の筋肉の動きを主に、管そのものも収縮しながら、血液よりもゆっくりと流れます。リンパ管も毛細状に身体全体にあるものの全体は閉じていて、リンパ本管に集まって胸のところにある静脈角から血液に戻ります。
一方通行で、老廃物を運べるのですから、他にも血管は通せない大きさの分子のもの、小腸からは脂肪を、タンパク質などや時には病原菌でも、リンパ液には入ってきます。確かに体の末端をマッサージすることは、リンパ液の循環を助ける効果はありそうです。
働き者の好中球は大活躍!
こうして免疫が活躍するのは血管内だけでなく、細胞のところ、リンパ系も含まれます。自然免疫は主に血液や組織液で主役となって活躍します。その主力といえるのが好中球になります。細菌や真菌などを貪食という、取込んで消化する働きが得意です。
造血幹細胞から骨髄系幹細胞になり、さらに分化
好中球(貪食する。白血球中最も大部隊、作られて体中を巡りつづける。寿命は短い)
好塩基球(寿命も短めでとても数が少ない、動物実験である効果は確認)
好酸球(寿命短めで、あまり多くないものの、貪食効果は確認、寄生虫対応が得意)
(殺菌成分を含む顆粒の形の違いが染色で分かる顆粒球の仲間)
好塩基球と好酸球はあまり活躍していないようにみえている現状で、どちらもむしろアレルギーを起こすものとして、注目されてしまっています。
この中でも好塩基球は、血液中以外の組織にいたり、ちょっと振る舞いが違います。ただし動物実験では、マウスでイエダニが吸血できなくする働きを確認しています。
ここぞという時のためにいろいろな働きがある単球
単球はすぐに働くものと、脾臓に貯めて置かれるものがあることが分かっています。人は脾臓がなくなっても、差し当たりただちには問題ありません。ところが臓器に炎症が起こった時に、単球が集まってきて回復を助ける事が知られるようになります。
単球
(形態変化して振る舞いが変わる。この段階では貪食。)
その時にあったどうもいきなり増えているようだ! という疑問は脾臓に血液中よりはるかに多量の単球が蓄えられていることで、やっと役割が分かったものです。好中球ほどではありませんが、寿命も短いため、いつもある程度の量が作られ貯められているようです。
すぐに使われて貪食をして自然免疫を担うとともに、貪食を行うと抗原を獲得免疫の働きをする細胞に知らせもします。それから体内でも成熟を続けて、獲得免疫としての働きを担う免疫細胞に、さらに変わることも分かっています。
ただの貪食をする自然免疫ではなく、緊急事態に駆けつけるレスキュー隊でもあり、それも場合によっては、違う働きもこなすスゴイやつということになります。
好中球の上位互換!?強力に困難な任務を果たすかのNK細胞
NK細胞はあくまで自然免疫として働けます。なぜそういうのかといえば、正常でなくなった細胞を巧みに見分けて見つけると、自らの判断で溶解してしまう高い能力があるからです。ガンやウイルスの感染も見分けて問題なく、判別して働いています。
造血幹細胞からリンパ球系幹細胞を経て分化
NK細胞
(ナチュラルキラー細胞ともいわれる。長めの寿命の間、身体を駆け巡る)
ずっと体中を巡っているのは、好中球と同じながら、寿命もずっと長く作用も強力です。これだけ高い能力を持つ免疫細胞ながら、発見が遅かったのは、NK細胞が素知らぬ顔で体内の問題を、どんどん解決してくれていたからかもしれません。
抗体の働きに比べると、さまざまな協力作用となっているT細胞などより、力は劣るようではあります。ただし、T細胞は標的を定める能力はなく、抗体の力が必要です。恐らくコビッド-19で、さしたる症状がない場合などの働きが検証されていくでしょう。
そもそも、なぜ攻撃対象を見分けられるのかという点についても、こうかな? と推測されているだけの状態です。またもちろん、万能の働きをする訳でなく、対応できない症例もあることは留意したい点です。
まとめ:自然免疫にもすごい働きあり!
こうしてみると自然免疫に分類される、人の体の初期対応だけでも素晴らしいものがあります。免疫の形には、さらに獲得免疫という、すこし働き始めるのに時間がかかるけれども、より強力な働きもあります。
今回は前編となる自然免疫編となっています。NK細胞と同じようにリンパ球系幹細胞を経て分化するT細胞やB細胞は、樹状細胞や、マクロファージなどの免疫細胞と役割分担をして、協力しながら、これも素晴らしい働きをします。
抗体による液性免疫に加えてのこれら、細胞性免疫、さらにNKT細胞にも後編で触れたいと思います。掲載まであと少しお待ちください。
本田耀一郎の記事は公園の写真集としても機能しています。
今回使用した写真は東京都立川市の国営昭和記念公園です。