さほど子どものためということが優先ではなさそうな東京都立桜ヶ丘公園。遊びの広場ができてからは、少し様相が違っています。ここは自然保護も意識されるエリア。
そんな中でも2009(平成21)年、最後の卒業式を迎えた農業者大学校の筑波移転後のこと。整備された遊び場はなるほど卒ない感じ。大型のコンビネーション遊具は、堂々たる存在感です。
尾根道からは立派なデッキも整備され、遠くには開発された街も見渡せる中、残された森の手前にはまず、いくつかの遊具や砂場。さらに一段下がったところには斜面を生かした遊びが!
大型コンビネーション遊具からは、爽快な滑りが特徴になるすべり台が発進。このすべり台の存在ゆえか、加えて主に上りルートとして使われそうな、ザイルネットが張り付いています。
子どもと遊びに出かけて「ここはいいな」と思える場所をご紹介しています。2013(平成25)年6月にオープンした遊びの広場はそれまで無かったものが、しかもとても便利な場所に出現しました。
桜ヶ丘公園は東京では多くない完全無料の公園。「子どもと楽しむ公園」シリーズが熱望する完全無料とは何を意味するかといえば、その気になれば一切のお金を使わずに楽しめる公園ということ。
それは具体的には駐車料金が要らずに、自動車で訪れたとしても無料で楽しめる状況を指しています。つまり遠方から大いに期待して訪れたとしても、負担が少ない公園なのです。
そうはいっても、もちろん公園に駐車場がないなら、料金は徴収しようがありません。占領後の日本国で施行になった、都市公園法に沿って整備されてきたのが都立桜ヶ丘公園。
駐車場があるということは、都立公園でもあり広い範囲からの来客を想定していたということ。場所柄、特に神奈川県など、他県からでもターゲットになりそう。しっかり残された自然を満喫するなら大満足間違いなし。
ただしだからこそ、子どもと遊具で遊ぶためならちょっと注意が必要。そして裏ワザとでもいえることも忘れないでください。いつものように独自に撮影した写真を満載して、把握しておきたい注意点含めて、人気の遊び場へのお出かけに役立つようガイドします。
子どもが大型遊具で遊べる桜ヶ丘公園をしっかり解説!
自然公園法による、都立多摩丘陵自然公園の区域に含まれている、都立桜ヶ丘公園。近隣の多摩ニュータウン開発地域とはまた別の、住宅地になっている場所であっても環境保全を求められている区域です。桜ヶ丘公園では遊具で遊べるのが、遊びの広場になります。
遊びの広場はゆうひの丘を繋ぐ場所
周囲はすでに住宅に囲まれていることもあり、山というには大袈裟にも思える環境。それでも園内の高低差を思えば、ただ丘に展開している公園だ! というのは足りない雰囲気でもあります。
遊びの広場は、住宅街の道路でも、園内の道でも、坂を上ってたどり着いた先。尾根道の記念館通りからは、デッキでちょっとだけ下りた場所で、斜面に段になってできた遊具の遊び場になっています。
記念館通りからみて遊びの広場の背後は、森の木々で埋め尽くされています。桜ヶ丘公園は、その森まるごと続いています。それからやはり背景になる、記念館通り沿いの西北の斜面地も、国の研究施設になるほぼ一体の森です。
さらに遊びの広場が記念館通りで隔たった辺りから、北のほうに向かって通りの東側の斜面が、ゆうひの丘になっています。かつての桜ヶ丘公園の飛び地は、遊びの広場がつなぎ目のようになったことで、隣り合わせになりました。
一般道を渡ると遊びの広場と反対側の斜面下にドックランが作られて、大通りになっている川崎街道からの駐車場もあります。もうひとつの平坦に移動して来れる駐車場(谷間のショートカットあり)と、距離なら同じくらい。
桜ヶ丘公園としての駐車場はこのふたつだけなので、遊びの広場は駐車場の近くに位置しているということになります。ただなんとなくそうなのか! という話のようで、公園の様子を分かってくると、とても便利なことなのだと分かります。
ゆうひの丘のほうも遊具はなくとも、子どもと一緒にちょっと行ってみる価値がありそう。ドッグランを見下ろすところから道の反対側にも、デッキが作られ森を隔てて広場が現れます。
こちらの段々と続く斜面からは、多摩川越しの北側に眺望が開けています。狭山丘陵まで見渡せてベルーナドーム(埼玉県所沢市、西武ライオンズの本拠地西武ドーム)を捉えることも可能です。
このロケーションのため地域随一といっていい夜景の名所でもあり、大人にとっても見逃せない場所です。こんな飛び切りの魅力含めて、得難い自然がある場所。遊びの広場は桜ヶ丘公園に、子どもと楽しむ価値を加えたことになります。
大型コンビネーション遊具には斜面のすべり台とネット遊具が付属
段々となっている遊びの広場の下のほう。上から2段目から、さらに斜面を使って設置された大型コンビネーション遊具が、やはり主役のように鎮座しています。
すべり台もザイルネットも、コンビネーション遊具の本体とはあまり関係ありません。大きな斜面があるからこそ、本体のほうを上るまでもなく楽しめるのがここならでは。
すべり台はいちおう、コンビネーション遊具から発進しています。ただし上のフロアからでなく、地面とはさほど違わない高さになっている、最初のフロアからスタート!
この滑走面がU字型に板を組み合せてできているすべり台を、グリッサンドすべり台と呼んでいます。この滑面材は超高分子量ポリエチレンでできています。滑りやすく(摩擦係数が少ない)、軽く耐久性が高い素材です。
豪快にすべり抜けるのに適していて、ロングスライダーでもローラーすべり台とは違うタイプ。設計の自由度も高いため大胆なカーブを取り入れたものもありえます。ただ桜ヶ丘公園のものは体験版というか、短かめ。
カーブもほとんどしておらず、隣のザイルなどを使って思う存分、なんどもトライするのにも困らない程度になっています。この斜面、遊具の脇のところには階段もあります。
斜面を直接上ってもいいので、ザイルネットを使うのが一番大変そう。コンビネーション遊具とは形式上繋がっているだけで、いわゆる直結はしていません。このくらいである意味ちょうどいい?
大型コンビネーション遊具のほうは、ちょっとグラグラする吊り板の橋と、リングトンネルでふたつの台場が繋がっています。すべり台のあるほうが二段重ね。
だからリングトンネルのほうは傾斜ができています。下のちょっとだけ上るフロアにはパネル遊具がいろいろ。ここだけで完結してもいい配慮といえ、さらにグラグラ橋を渡ってもよし。
グリッサンドすべり台を滑ってもよしといったところ。二段になっているほうの下の階は、〇✖のパネル遊具経由ですべり台への通路なだけ。
上に向かうにしても、階段というよりも大きな三角の足場を使ってです。この上はリングトンネルを使って登り切ったところでもあります。
リングトンネルに向かうには、クライミングウォールやはんとう棒を使うオプションもあります。さほどの難易度はないにしろ、少し成長してからでもただ退屈では終わりません。
二段になっているほうには、湾曲しているクライミングウォールも。連絡手段になるのかといえば、三角の足場の途中に繋がっている状態です。最大の難関はここになりそうです。
広い砂場と小さなほうの複合遊具、白く輝く遊具も!
記念館通りからデッキで下りてすぐのほうには、機能はほとんどすべり台なだけの、小さなコンビネーション遊具と砂場、クッションドームとスプリング遊具などがあります。
砂場はきちんと囲いが立てられて大きめのもの。清潔に保たれることが期待でき、多少混んでも大丈夫そうなのはいい感じです。
ベンチの前に動物モチーフのスプリング遊具。バネが露出していないのは、進歩形といえそうです。
白く輝くのはクッションマット。柔らか素材ながらエアを送り込んでいるいわゆるふわふわドームではないため、トランポリンのようには遊べないです。こういった遊びの広場の上のほうは、幼児用だと表記されています。
大谷戸公園との連結も遊びのポイント
桜ヶ丘公園を訪れた時、子どもと遊ぶならば駐車場近くの遊びの広場が、遊具で遊ぶ唯一の選択肢。ところがせっかくここまで来たのだから、それで済ますのはもったいない面もあります。
遊びの広場が経路を繋いだ、ゆうひの丘も街に向かって突き出た場所で、北に伸びています。そこと合せたとしてもこの駐車場のあるエリアは、桜ヶ丘公園の半分にも満たない広さしかありません。
しかも西側の大部分は立ち入ることもできない野山が大部分で、このひと山を超えた住宅街との境目付近に、まさしく街中によくある公園らしき雰囲気のエリアがあるのです。
ちなみに公園管理事務所はその南の最も端っこ。見上げると聖ヶ丘(ひじりがおか)橋が架かっていて、その下が桜ヶ丘公園の境界になっています。橋を越えた所には遊具がふたつ。
ブランコ、小さなすべり台付きの遊具と砂場があります。聖ヶ丘緑地となっていて、桜ヶ丘公園の遊具ではないものの、もちろん利用はできます。ただし遊びの広場からこの辺り、最短距離は取れません。
敷地を隣接する連光寺公園も挟まっているような状態で、ターザンロープと小さな遊具があるこの公園も、スムースに連絡はとれず別物な感じ。公園管理事務所とは公園西中央口を経由しなければなりません。
公園西中央口まで旧多摩聖蹟記念館や記念館口駐車場付近を経由した後、南北の公道沿いの園路を進むようになっています。そしてこの南北の園路の北の端こそが、子どもと楽しむ視点からは欠かすことができないのです。
都立桜ヶ丘公園は、多摩市の大谷戸公園とは一体になっています。利用する上でふたつの境目は意識できません。園路を進んでいくと、いつの間にかどちらかから、もうひとつに到着してしまうことになります。
桜ヶ丘公園から大谷戸公園に着いた! と分かるとしたら大型遊具とキャンプ場のある広場を見つけたときになりそうです。そして遊具にはとても見どころがあります。
ふたつの公園の連絡は、広くてよく整備された南北の園路を進むルート。そしてまさに山道といっていいようなショートカットが、遊びの広場との間に存在します。さらに旧多摩聖蹟記念館を絡めた森を抜けるルートもあります。
大谷戸公園の遊具とふたつの公園の連絡については、大谷戸公園の特集記事を別途用意します。事実上ひとつである桜ヶ丘公園と大谷戸公園。その姿を余すことなく理解するにはどちらもご覧頂くことをおススメします。
ここが聖蹟であるというのはどういう意味?
端的にいってしまえば聖蹟とは、天皇の行幸地ということ。ただしこのことを敢えてこんな言葉で表すようになったのは明治天皇の時から。元々はもっとざっくりと貴人の訪れたところを表す言葉だったのです。
1871(明治4)年の太政官布告以来、天皇の行幸に係る地の呼び名になりました。例えば元正天皇が訪れて、改元の由来にもなった養老の滝が、養老公園にあります。けれども養老の滝を、わざわざ聖蹟などといいません。
そもそも特に近世になってからは、天皇は御所をめったなことで出ることはなかったのです。聚楽第行幸(後陽成天皇が1588(天正16)年、豊臣秀吉を訪問)、二条城行幸などは、歴史的な出来事として記録されています。
後水尾天皇が1626(寛永3)年、徳川秀忠、家光を訪問し、秀忠の娘、和子(天皇の中宮)と5日間滞在するため、二条城は二年間準備して拡張造営されました。聖蹟は1919(大正8)年の史蹟名勝天然紀念物保存法により、史蹟に指定されるようになります。
占領後GHQにより指定解除されて以来、天皇の行幸地を聖蹟と定めることはなくなりました。こうしたことなので聖蹟というのは、桜ヶ丘公園最寄り駅のひとつの名前になる、聖蹟桜ヶ丘に限ったものではないです。
それでも駅名にまでなったのは他にないため、東京の多摩地区を知る人であれば聞いたことがあって、馴染のある言葉になっているのでしょう。その命名の元になるのが桜ヶ丘公園にある旧多摩聖蹟記念館になるのです。
多摩市の桜ヶ丘という場所は、聖蹟桜ヶ丘駅のところでも桜ヶ丘公園のところでもなく、桜ヶ丘公園とは鎌倉街道の反対側のことです。これは関戸駅が聖蹟桜ヶ丘駅に変わってから、駅にちなんでつけられた地名です。
桜ヶ丘公園のある連光寺の付近では、特に向ノ岡で名主の富澤政恕が主導して桜約350本を植樹。元からあった老木を復興して向ノ岡の桜林(1860(万延元)年より)として知られるようなりました。
多摩市では草競馬が開かれて桜馬場と呼ばれたり、桜楽軒という茶屋が賑わったりといったエピソードを伝えています。桜ヶ丘公園にはヤマザクラやソメイヨシノなど、約300本の桜が植えられているそう。
そうした桜の園付近は明治から大正に、皇室の連光寺村御猟場に指定され、明治天皇も4回、兎狩と鮎漁に訪れており、元宮内大臣の田中光顕が1930(昭和5)年に聖蹟記念館を建設したこともあって、1937(昭和12)年聖蹟桜ヶ丘駅(関戸駅が改称)ができたのです。
桜ヶ丘公園を訪れるには(アクセスについて)
住所:東京都多摩市連光寺三、五丁目
連絡先:042-375-1240(桜ヶ丘公園サービスセンター、連光寺5-15)
公式サイトからの引用
小田急多摩線「小田急永山駅」、京王相模原線「永山駅」から京王バス聖蹟桜ヶ丘駅行き、または聖ヶ丘団地行きで「桜ヶ丘公園西口」下車1分
京王線「聖蹟桜ヶ丘駅」から京王バス永山駅行き「桜ヶ丘公園西口」下車1分
【自動車を利用する場合】
駐車場:無料(95台)
記念館口:8時45分~16時30分、連光寺5-4、57台(車イス用2台)
ゆうひの丘:8時45分~20時、連光寺3-16、38台(軽1台、車イス用1台)
ゆうひの丘駐車場はドッグラン横
完全無料ではあっても、公園の規模の割には収容台数は少ないです。ほんとうはもうちょっと拡張して欲しいところ。ゆうひの丘駐車場は川崎街道沿いで分かりやすいです。
【公共交通機関を利用する場合】
最寄駅:京王相模原線京王永山駅(小田急多摩線小田急永山駅)約1.5 km
京王線と小田急線の永山駅は一応別々にはなっているものの、並んでいて一体のようなもの。京王線のほうが桜ヶ丘公園側にあるというだけの話です。永山駅からは西中央口を目指すことになります。
最寄バス停留所:記念館前(京王バス桜06、永山駅~聖蹟桜ヶ丘駅)
遊びの広場には東西に園内を横断することになります。遊びの広場へ向かうならば、約2.2 kmほどで聖蹟桜ヶ丘駅からでも、同じくらい。公式サイトで勧めている通りバス利用が無難でしょう。
まとめ:桜ヶ丘公園と大谷戸公園は事実上ひとつ
桜ヶ丘公園と大谷戸公園は何が違うかといえば、都が管理している部分か、多摩市が管理している部分かそれだけです。この環境を保全するという目的においては、東京都による自然公園という位置付でひとくくりという事実もあります。
いずれにせよ子どもと遊ぶ視点からすれば、距離は離れている桜ヶ丘公園の遊びの広場と大谷戸公園、どちらも見逃すわけにはいきません。さらに隣合わせという意味では連光寺公園も少し絡んでくるのです。
公式サイト:公園に行こう! 桜ヶ丘公園