水元公園というのは公園名のみならず。葛飾区の住所を表す、れっきとした地名でもあります。ならば地名の水元公園のところが都立水元公園なのかといえば、それだけでもありません。
都立水元公園はもっと広い範囲に渡っていて、しかも埼玉県にまで及んでいるのです。水元に係る地名(水元公園、水元、東水元、西水元、南水元)が由来とするのは、小合溜井。
江戸時代からの灌漑用水で、地域の水の源だったもの。今でも見た目の様子とは違い、河川ではないとして、そのため東京都と埼玉県で解決できない境界争議中の場所にもなっています。
いずれにせよ正確には未解決であっても、このエリアではおおよそ小合溜井が東京都と埼玉県の境目。たくさんの水を湛えて存在感のある部分は、地図上で左右逆のS字を描いているような形。
その湾曲の下の部分がまさに争議の箇所で、ちょうどその部分は水元公園の対岸が、埼玉県営みさと公園になっています。水元公園には江戸川沿い方面の東金町運動場が加わります。
東金町運動場を除く水元公園は、むしろみさと公園と趣旨をともにして、楽しみ方も共通になる一体感のある場所。小合溜井が南側で小川のように変わる辺りで連絡されています。
小合溜井に生息する水辺の鳥の楽園とでもいえ、バードウォッチングが両岸のそこかしこで楽しめ、バードサンクチュアリとするエリアが確保されています。南側の水辺のさとは旧水産試験場。
淡水魚の研究が行われていた水場環境を保全する場所で、北側にはいろいろな水生植物が育つ環境を整備しています。こうした特別な試みに限らず、生態を支える環境が豊かで、それゆえの楽しみがいろいろ。
鳥の種類と数、観察の設備といった点で、23区に限らず野鳥観察で屈指のスポットといえます。水辺の生き物は鳥にとってだけでなく、釣り人の期待にも応えるもので、多くアングラ―を集めています。
もちろん水生植物の観察にももってこい。バーベキューやキャンプのための用意もあり、大型遊具も水元公園、水元公園東金町運動場、みさと公園と散在してはいるものの、特色あるものが揃っています。
残された自然環境はもはや景勝地といえ、園内の食事処、売店含めて周囲の飲食店を楽しみにしてもいいです。レジャースポットとして多彩な魅力があり、お出かけ先として覚えておいて損はなし!
大人の散策でも、デートでも、子どもと遊びに出かけるのでも「ここはいいな」と思える場所です。いつものように独自に撮影した写真を満載して、人気のお出かけに役立つようガイドします。
歴史の痕跡が作った憩いの場をしっかり解説!
かたや都立、かたや埼玉県営の水元公園、みさと公園をいっしょくたにしてしまっても、利用者目線ならば何ら問題なく思えるのも、小合溜井の存在ゆえです。
どちらにとっても象徴的な存在ながら、帰属については争いになっています。一般的な河川の定石である真ん中を境にするということで合意が取れておらず、国土地理院の地図にも線が引かれていません。
すべてが東京都に属するという主張は、江戸時代に溜池として整備された小合溜井が河川でなく、いま東京都葛飾区となっている地域に属していたという古文書があるからということです。
利根川東遷事業と関係あり
小合溜井はかつての利根川の名残りです。現在銚子が河口になっている利根川が、江戸時代にいまの鬼怒川水系の川に付け替えられたものなのは、すでによく知られていることでしょうか。
この荒川の西遷、利根川の東遷は徳川家康の江戸入府に伴う事業。そして小合溜井の付近は江戸でないだけでなく、もともとは武蔵国でもなく、下総国だった場所です。
そういう意味ではむしろ、ここが境で行政区画を違えていることのほうが、後からの話です。江戸時代が始まってまもなく、下総国の西の端の葛飾郡が分割されています。
下総国は下野国(現在のほぼ栃木県)まで続いていたもので、小合溜井は武蔵国の葛飾郡として分割移譲されたほうに位置しています。ちなみに下総国の国府があったのはいまの市川市、国府台が推定されています。
国府台の辺りは下総国のほうの葛飾郡に残っていました。ほぼいまの江戸川付近で分割されたと考えられます。川の対岸になる、いまの東京都葛飾区は、武蔵国の葛飾郡の南部を占めていました。
離合激しい東京湾に注ぐ河川を安定させ、江戸を支える食糧生産を確保して、物流路にもなっていく治水事業は、江戸時代の前半でひととおりの成果を挙げ、形が見えてきていました。
その後、徳川吉宗(将軍就任1716年)の時代に、残された利根川の古い流れを利用して、灌漑用水としたのが小合溜井。地域の水元となったということになります。
地域のランドマークである小合溜井は、廃藩置県のときに東京府と埼玉県の境界として、大場川とともに使われることになったのです。特に明治維新前にはまったく歴史を共にしてきた地域です。
小合溜井の周囲を活用する水元公園・みさと公園
小合溜井は中川、大場川からの流れを見据えるように、水元かわせみの里のところから始まっています。S字を逆さにするような形で豊かな水を湛えています。その西側が水元公園。
北側が水元公園Aブロックで、南に続くBブロックが逆さS字の下の湾曲部、対岸の東側がみさと公園になっています。Aブロックは芝生の中央広場が大きな面積を占めて、せせらぎ広場の流れもあります。
せせらぎ広場は徒渉池として利用でき、じゃぶじゃぶ池と思っていいです。溜池が大きく迂回した内側になる広場の小合溜井沿いには、水生植物園や、バードサンクチュアリがあります。
住宅街と公園の境になる水元さくら堤側は自由広場、バーベキュー広場、冒険広場として利用されています。第一駐車場を挟んで、サービスセンターがある辺りからがBブロック。
水元大橋付近はメインゲートらしき雰囲気の場所で、内溜と対面するゲートの前に噴水広場と売店があります。Aブロック方向にある涼亭は、休憩所、食事処、集会所として利用されます。
噴水広場から水元大橋を渡ると睡蓮池、はなしょうぶ園といった水生植物が育つエリアを散策できる場所が続き、水辺のさとは時間外は締め切られる、もっと環境保全が意識されたエリアです。
公園の南側で小合溜井は、小さな橋で渡れる流れになっています。その東のほうが水辺のさとの周囲になっていて、時間で施錠される保護地区と散策路が両岸で続きます。水辺の生き物館などもあります。
みさと公園は対岸側の水元公園(の特にA、Bブロック)と同じ雰囲気。水辺以外にあまり水郷な感じのところがないのが、みさと公園のほうです。森のような木立以外の植物園なら花木園があります。
小川のようになった小合溜井は、江戸川に注いでおり、流れ沿いに都県道54号松戸草加線と、451号江戸川堤防線の間がCブロックとされて、東金町運動場ということになっています。
Cブロックは東京外環自動車道が通り抜けています。高速と高架下の道路の西側が遊具が並ぶエリア、江戸川側になる東のほうは主に運動施設が並んでいます。
子どもが大型遊具で遊べる場所は?
みさと公園の遊具での遊び場は、冒険トリデを中心とする遊具広場。水元公園では例外的に少しある二カ所を除くと、Aブロックの冒険広場、Cブロックの東金町運動場にまとまっています。
水元公園Aブロック冒険広場
水元公園の第一駐車場の北側に隣接している冒険広場は、築山の上にロングスライダーが立ち並ぶ遊び場。ターザンロープといくつかのスプリング遊具が置いてあります。
ドッグランとバーベキュー広場にも囲まれた冒険広場の詳細は、水元公園A・Bブロックを中心に特集する「子どもと楽しむ公園」シリーズでご参照頂けるようにしました。
水元公園Bブロック
水元大橋の東西にサービスセンター、涼亭、売店になるグリーンテラス水元や睡蓮池のあるBブロック。サービスセンター前には、スプリング遊具が置かれた場所があります。
また釣り堀になっている内溜の脇、香取神社の隣に隠れるように石庭ひろばがあり、ここにも少し遊具があります。こちらも水元公園の特集編でご確認ください。
水元公園東金町運動場
東金町運動場では、東京外環自動車道と高架下の一般道で区切られる西側に、大型遊具が並んでいます。また主にスポーツ施設が占める高速道の東側にも少し遊具があります。
運動施設含めての詳細は、やはり「子どもと楽しむ公園」シリーズとして別途特集をご用意します。
みさと公園遊具広場
みさと公園の第一駐車場の目の前は、アスレチック風遊具の山になっているわくわくチャレンジ冒険トリデと、その築山の足元に並ぶ遊具の遊び場になっています。
規模や遊具の種類から考えて、水元公園・みさと公園エリアの遊具のハイライトは、ここを照らしています。またすくすくランド系になるすくすく砦も見逃せません。
遊具広場の詳細含めてみさと公園もまた別途特集編を制作します。
水元公園・みさと公園を訪れるには(アクセスについて)
水元公園
住所:葛飾区水元公園・水元猿町・東金町五、八丁目・埼玉県三郷市高洲三丁目
連絡先:03-3607-8321(水元公園サービスセンター、葛飾区水元公園3-2)
みさと公園
住所:埼玉県三郷市高洲3丁目362
連絡先:048-955-2067(管理事務所)
公式サイトからの引用
水元公園
JR常磐線・東京メトロ千代田線「金町」から 京成バス(戸ヶ崎操車場または西水元三丁目行き)「水元公園」下車 徒歩7分
※3月から11月の土日祝日は、午前9時から午後4時40分まで金町駅発着で公園沿いを走る循環バスが運行されています。みさと公園
JR武蔵野線「三郷」駅南口または、つくばエクスプレス「三郷中央」駅からコミュニティバス金町駅南口行で「高州地区文化センター入口」または「みさと公園前」下車徒歩3分。
京成本線、東京メトロ千代田線「金町」駅南口からコミュニティバス三郷中央駅行または、三郷駅行で「みさと公園前」または「高洲地区文化センター入口」下車徒歩3分。
特に水元公園は広大なため、どこに向かうかによって、適した駐車場もバス停留所も違います。また、アクセスについてもそれぞれの公園の特集編も併せてご参照ください。
【自動車を利用する場合】
駐車場:どちらも有料
水元公園には有料駐車場が三カ所あります。冒険広場を利用するならば第一駐車場、水辺のいきもの館を利用するならば第二駐車場。東金運動場を利用するには第三駐車場というのが目安です。
駐車場利用料金:(普通車)200円(1時間まで、その後30分毎100円)
最大料金が設定されていて、12時間ごとに800円を繰り返します。営業は24時間ずっとです。第一は214台、第二は24台、第三は49台が利用できます。
みさと公園は第一駐車場と第二駐車場が南北に隣り合って、時計塔への入口のところで分かれています。遊具広場は第一駐車場の向かい側です。331台(第一118、第二213台)用意されています。
駐車場利用料金:(普通車)200円(1時間まで、その後30分100円)
駐車場利用時間:
第一は8時30分~午後7時、(11月~3月は17時30分まで)、第二は24時間
どちらの公園も基本的には同じ料金設定です。これらの各駐車場相互の移動は自動車でするのがよさそうな距離。水元公園内であっても、料金はそれぞれの場所ごとに支払うことになります。
1時間以降の刻みが30分ごとなので混雑がなければ、拠点ごとに移動しながら周囲を巡るのがよさそうです。ただし水元公園の駐車場には、12時間まで800円という最大料金があります。
どこを使うにしろ、どこかの端までいったり、小合溜井の対岸にいくと戻ってくるのはなかなか難儀です。あまねく遊び尽くすのか、目的を決めて何度も訪れるか、制覇するにしても考えたほうがよさそうです。
【公共交通機関を利用する場合】
最寄駅:JR常磐線金町(どちらの公園も)
どちらの公園にしても、最も近い鉄道駅はJR常磐線金町駅です。駅前には公園側とは反対側に、京成金町駅(京成電鉄)があり、こちらを利用しても同じです。
どちらに向かうにしろ、徒歩では厳しい場所といえます。住宅街を縫うようにして抜けると1.4 kmほどで、水元公園の水辺のさとと呼ばれる地区には到着します。
そこからならば、みさと公園の端(花木園付近)には300 mほど。ちょうど小合溜が細い流れになって、渡れる部分の付近でもあるからです。
遊び場に行くと考える場合、どこにもまだ少し移動しなければなりません。おまけに大まかに三ヵ所、どこも別の方向になります。公園の端まではさらに距離があります。
東金運動場の運動施設や、北側の水辺で野鳥や植物観察をしたいとすると、駅からの距離と同じか、より長い距離を移動しなければなりません。
北西側の水元かわせみの里付近なら、大場川停留所も検討するといいです。小合溜井が大きく湾曲する内側、植物園やバードサンクチュアリへは、とにかく歩く以外に方法はありません。
最寄バス停留所:
水元公園:水元公園(京成バス金61~63、小56)
みさと公園:みさと公園前(金02)
バス便の起点もどちらも金町駅と考えていいです。水元公園は八潮駅、みさと公園は三郷中央駅と連絡する路線を使うと思えばいいです。八潮駅と三郷中央駅はつくばエクスプレスの隣どうしの駅になります。
みさと公園については、公式の案内通り高洲地区文化センター入口が遊具広場に近そうです。ただし、公園脇の道路ではなくもうひとつ東側の道沿いです。みさと公園前停留所は、花木園のすぐ近くです。
水元公園について、水元公園バス停が最寄なのかといえば、微妙な問題です。まず土日限定ならばBBQ広場・冒険広場入口バス停(金63)を利用できます。BBQ広場北のほうで、公園沿いの道路にあります。
しかしながら、土日限定で本数も多くはありません。また東金運動場を隔てる都県道54号松戸草加線沿い、遊具のある辺りには、高須、桜土手(金64)という停留所があります。
ならば水元公園停留所はどうなのかといえば、公園の隣の辺りというのに違いはないものの、隣接するのは小合溜井の内溜という住宅街に突き出た部分になっています。
水元内溜水辺の道を少し歩かないと、公園ゲートに至りません。ただし、近隣住民の足である四路線が通り、多くの本数があって便利で、隣接する代表的なバス停といえばここといってもいい状況です。
まとめ:事実上一体、それだけでない広大な公園エリア
都県にまたがっていても、小合溜井というキーワードを元に、事実上一体になる公園エリアなのが水元公園・みさと公園になります。小合溜井の周囲は楽しみ方の趣旨もまったく同じ。
さらに水元公園はもっと広い範囲に渡るため、また違った趣向も楽しめる事情だと把握すれば、間違いない理解に至ったといえます。遊具にも見どころがあり、大人が楽しむのにも充分な、憩いの場ということになります。
公式サイト:
公園へ行こう 水元公園
埼玉県営みさと公園・吉川公園