名古屋に本社のある、遊具メーカーの企画だからなのか中京圏を中心に、目立ち始めている状況を掴んでいます。いずれにせよとても助かるすくすくランド系遊具場。外遊びという視点からは、0~2歳育児のキラースポットとでもいえる存在感があります。
3歳未満の専用スポットというのが、すくすくランドのお触書。けれども、それを示すメーカー自体が、おおよそ3歳! という表現で3歳以上対象の遊具をすくすくランドのラインナップに加えています。
この事実を持ってして、ツノを生やすのは早計というもの。そうしていることには、よく考えられた意図があるのです。場合によっては分かりにくいこの話、例えば2歳差育児といった事に直面しているならば、ひしひしと実感できる話です。
年子であったり2歳差で子どもを抱えてしまったら、下の子が特に公園など、外で遊んでいる時に、「上の子かわいくない症候群」を発症してしまったとしても、ほおっておけはしません。
0歳から1歳なかばほどまでの乳児や、そろそろ乳児の頃は終わり! といった子どもが遊ぶのにぴったりな遊具があったとして、もう卒業だ! という子どもが兄弟姉妹にいた場合、好き放題にして野に放つ訳にはいかない場面に遭遇しえます。
例えば年子や2歳差育児の場合、まだまだ見守りも必要だからです。すくすくランドにおおよそ3歳のラインナップがあるのは、こういった点を考慮したうえでのこと。2歳未満専用スポットだからこそ、また必要なことなのです。
そこまで考えているからこそすくすくランドは、ただ2歳未満専用スポットで便利でいいな! と思う以上の価値がありそうです。「子どもと楽しむ公園」シリーズで特集した公園の中で、そんなすくすくランド系、どこで遊べるのかまとめて、一目瞭然分かるように特集してみます。
すくすくランド系遊具のラインナップ
すくすくランドで標榜しているのは、遊育空間であれ! ということ。3歳未満児のための「守って」「楽しく」「すくすく育つ」専用の遊び場を目指しているとのこと。ラインナップは成長に合わせた5段階を考えています。
0歳児のためから始まるすくすくランド系遊具
ただ年齢を重ねるという意味でなく、「すくすく育つ」というのは、その時できることを、精一杯やらせてあげたいということ。すくすくランドを用意するメーカーでは、0歳児まで想定しています。このための遊具はまず、ハートフルアイランドになります。
赤ちゃんの発育段階は、首がすわる頃、そののちに始まる活動、いよいよ歩くための活動に分けてみると、できることがまとまります。まったく自分では移動できない状態から、首がすわれば、立つ以外のいろいろな活動が始まるでしょう。
ハイハイに代表されて、その前段階をずりばいと呼んだりします。寝返りができて、お座りで過ごせるようにもなるでしょう。すくすくランドの想定STEP1はこの段階。ハートフルアイランドの寝返り遊びのコーナーは、円卓のような形になっています。
テーブルと違うのは、人工芝の低い築山と連絡できる程度にしか高さがないこと。普段寝ている布団よりも固く、それだけ動きやすい訳です。いうなれば、ゴロゴロするための専用床スペースのようなもの。人が歩く場所ではないということです。
そこから這い出すのは、これも日常とは違う傾斜のあるスペース。人工芝が張られて安心できる屋外活動になります。これに日よけになる木の模造品と、時には遮光ネットが張られて、ハートフルアイランドを形成しているのです。
そしてSTEP2は、つかまり立ち前後ということで、想定はおおむね1歳3ヶ月まで、STEP1のハイハイなどしかできない子どもというのは、具体的にはおおむね9ヶ月未満を対象に想定。場合によっては外遊びは控えるような月齢も、ハッキリ対象にしています。
このSTEP2として用意されるのは、あるけるぞーさんになります。象がモチーフになった、つかまり立ち補助のウェーブパイプが主な機能。それまでに達成している動きを生かして、くぐれる部分もついています。このどこもがラウンドした形状も意識したことです。
3歳未満のためのすくすくランド系遊具
次のSTEP3として想定するのは2歳未満。歩き始めた子どもの発育を考えた段階といえます。その心は転ぶこと。転ぶことはしっかり歩く練習でもあると考え、転んでも大丈夫な場所を、遊具として提供する考えです。
また、もっと歩こうという意欲も刺激できることを意図して、たどり着いたら、手を協調して使い、何かをすることを考えています。こうした意図でできたのが、よちよちクッションです。ふたつのコーンポストのような突起物が動きを誘導し、床面が敢えて柔らく歩きにくいことが、結果として機能を発展させ、突起含めて柔らかいことで、安全に転んでみれるようになっています。
さらにSTEP4に進んで意図されるのは、対象がおおむね2歳。いよいよ公園遊具で遊ぶイメージ通りのことができるよう、その準備になるような形が目指されています。いもむしステップくんは、渡るといういろいろな遊具でみられる基本機能の、極めて初期的な形になっているといえます。
ポリステップによる段差が凸凹に横に少しずれながら連続します。末端に置かれるゲートのようなデザインパネルを4種類用意して、ステップの道と組み合わせてあります。すくすくランドの柵の中を、卒業するための遊びということでもあります。
おおむね3歳に対応
STEP5として想定されるのは、そろそろコミュニケーションということになります。STEP4 までの非日常性(普段の生活環境とは違う環境)というのは、まさに遊びの始まり。ひとりひとりの遊びは、誰かと一緒に遊ぶことで次の段階に向かいます。
砂場がユニットになっているものが用意されて、個人としても創造力を育み、友達との関わりも作っていくための機能も併せ持つスペース。また、見守りの程度も軽減されるにつれて、集う親同士のコミュニケーションも可能になってくる頃。そうした場所としても意識されているのがサンドコミュニケーションになっています。
また、チャレンジマウンテンはふわふわドームの準備段階のような遊び。ごく低い盛り上がった部分に挑戦して、転がってしまった時でも、さして問題ないような作り。ゴムチップ舗装部分に広く取り囲まれて、安全面の配慮も充分なお山型遊具です。
すくすく系では、もっとも年齢の進んだ子どものために用意されるのが、STEP5+の遊具。その年齢なりにというよりも、本来は柵の外の遊具で遊ぶのが適している子どもが、すくすくランドで弟や妹と、コミュニケーションできる手助けになることを意図しています。
あまり大きな動きの起こらない、トイボックス遊具として用意されたものになります。パオスライダーは象のすべり台。他にカタログにラインナップされるのは、例えばミニミニハウスとでもいった風情で3種の小屋型のもの。
同じ形ながら色と模様で、ドーナツハウス、マリンハウス、リーフハウスと違うモチーフが施されています。ビークルは赤い自動車型のもの。こういったものは、すくすくランドの柵から出ていった時には、公園の中で、同じような既存のものが見つかるでしょう。
幼児でも低い年齢層を対象にしている遊具といえば、すくすくランド以外の定番はパネル遊具。例えば大型コンビネーション遊具遊具の地上部分に、言い訳のようにして設置されるパネル遊具は、個人で動かす機能が中心。
すくすくランドの中に置かれているのは、年齢層の離れた子どもの社会性がテーマになっている! という違いが見られます。中にはパネルの両サイドで、高さが違っているものが、すくすくランドのコミュニケーションパネルの中には存在します。
そしてすくすくランドのラインナップには、場合によってはもう少し冒険を試みるものもあります。見守りを大前提としたうえで、もっと果敢な動きに挑戦することになり、その場合は対象年齢もできるならば、誰でもということ。
またひとつの中にも、複数の段階を組み合わせてあるもの。東間掬子(きくこ)さんが監修するK.TOMA’Sアイテムとなる、すくすくコンビネーション遊具とでもいえるものは、そういったラインナップです。
どこにある?が一目瞭然、すくすくランド系の遊び場
すくすくランドは、中京圏から全国に広がり始めています。特に九州や沖縄で設置例が増えてきました。またすくすくランドと名乗らなくとも、狙いはほぼ同じなすくすくランド系の場所もあります。共通するのは柵で囲われて隔離されたスペースなことです。
あいち健康の森公園(愛知県大府市、東浦町)すくすくランドにあるのは?
柵で囲われたすくすくランド系で意図されているのは、ゲートで厳密に年齢チェックをするということよりも、すでにそれなりに活発に動けるまで成長した子どもと、その前の段階対象では遊具は違うべきということ。
また、ハイハイレベルでの活動も意図されるため、みだりに立ち入らないことで、清潔度を保ちたいこともあるでしょう。あいち健康の森公園のすくすくランドはメインゲートといえる南西の角、げんきの郷と対面するゲートから入ってすぐの大芝生広場にあります。
首がすわってからなら、9ヶ月未満でさえ想定するハートフルアイランドも置かれるあいち健康の森公園も、0歳児から遊べる遊具が揃っていることになります。
加えてつかまり立ち補助器ともいえるあるけるぞーさんと、おおむね2歳で歩行の発達を願ったいもむしステップくんがあります。
そのほかにはすくすく系コンビネーションの、K.TOHMA’Sアイテムのチャレンジポールとポール渡りがあります。どちらも対象は2歳未満から踏み出さないものの、基本的な公園アイテムとなる、はんとう棒の小さなものを、段階を踏んでクリアしていく仕掛けです。
こうしたラインナップのため、あいち健康の森公園の場合は、2歳未満専用というコンセプトに貫かれたすくすくランドだといえるでしょう。
岐阜県こどもの国(岐阜県養老町)すくすくひろばにあるのは?
すくすくランドではなく、すくすくひろばを名乗るのが岐阜県こどもの国の場合です。岐阜県養老町で養老の滝のあるのは養老公園。その一部で、子どもの遊びのためにあるこどもの国。中でもどちらかといえば、小さめの幼児専用スペースということになります。
すくすくランド系で用意される遊具の中には、遊び? と思わせるような0歳児対象のいわば「ハイハイ場」とでもいえるようなハートフルアイランドなどもある中、同様に柵で囲われるすくすくひろばに関しては、そのラインナップは置かれていません。
代わりにこどもの家が、役割を果たせるということなのか。どちらかといえばすくすくランド系の中でも、おおむね3歳な感じなのが、すくすくひろばで、すくすくランドをそのまま名乗らないのは、本来意図される2歳児未満対象ではないからでしょう。
例えば象のパネルを使った小さなすべり台、パオスライダーは、対象年齢を3歳以上と考えて作られたもの。それでも柵の外のすべり台に比べれば、明らかに準備段階のものです。おおむね3歳でもSTEP5+とする意図は、年齢が近ければ一緒に遊べる程度のバランス。
兄弟姉妹で訪れる機会で、お兄さん、お姉さんを放置できないほどでなくとも、年上の兄弟姉妹が、年少の子どもの面倒を見る役割で遊ぶものも、しっかり設置されています。柵の外でもう遊べても、満足して一緒に遊べるならばどちらも目が届き、保護者としてはより安心です。
またすくすくコンビネーション遊具になる、ハンモックの設置例としても該当します。メーカーが例示するハンモックネットとはちょっと違い、親と子で遊ぶものな形。小さな子どもが面倒をみるのでは、ちょっと重荷な遊び方になります。
すくすくひろばは、休憩シェルター設置例にもなります。これもメーカーの図解とはやや違うものの、遊び場全体を覆うすくすくドームコンセプトが採用された、膜屋根付きの遊び場。
それもあって休憩シェルターで保護者は休み、柵の中で子どもが遊ぶのもアリな感じです。ただしメーカーの狙いは、遊び場の隣でお弁当やおやつを食べる用途を想定しています。これも本来は保護者の避難場所ではないのです。
中勢グリーンパーク(三重県津市)すくすくランドにあるのは?
広い芝生の広場を囲むようにいろいろな遊具が揃うのが、三重県津市にある中勢グリーンパークです。豪快な遊具が斜面に設置され、大型コンビネーション遊具もあるなか、すくすくランドもあります。
ハートフルアイランドに始まり、あるけるぞーさん、よちよちクッション、いもむしステップくんときて、サンドコミュニケーションまで、メーカーの用意するSTEP1からSTEP5まで、兄弟姉妹のコミュニケーションを含む狙いまで含め、ほぼフルラインナップ。
これでもう少しメンテナンスが徹底していて膜屋根があり、すくすくコンビネーションも取り入れられていたならばパーフェクト。そうはいっても理想形に近いすくすくランドが、中勢グリーンパークにあるといっていいでしょう。
全国でみるすくすくランド施工例
中京圏の他には、九州や沖縄でも導入例が増えています。ららぽーとに用意された例も登場して、商業施設のサービスとしてならば、極上のものといえそうです。商業施設が提供する遊具といえばビックホップガーデンモール印西のものは破格ながら、そこまではなくとも、すくすくランドもあったらとてもうれしいです。
- 北海道
- 青葉公園なかよし広場(千歳市)
- 東北
- 国営みちのく杜の湖畔公園(宮城県川崎町)
- 関東
- 蒲田一丁目公園(東京都大田区)
- こどもの国(神奈川県横浜市緑区)
- 中部
- 長浜海浜公園(静岡県熱海市)
- 新道中央公園(愛知県名古屋市)
- ららぽーと名古屋みなとアクルス(愛知県名古屋市)
- 堀内公園(愛知県安城市)
- あいち健康の森(愛知県大府市)
- 笠松町運動公園(岐阜県笠松市)
- 岐阜ファミリーパーク(岐阜県岐阜市)
- 中勢グリーンパーク(三重県津市)
- 武生中央公園(福井県越前市)
- 関西
- 水無瀬川緑地(大阪府島本町)
- 九州
- みどりんぱぁーく(福岡県水巻市)
- 直方中央公園(福岡県直方市)
- 緑とスポーツのふれあい公園(福岡県筑前町)
- 東光山公園(鹿児島県出水市)
- たるみずたるたるぱあく(鹿児島県垂水市)
- 天城町総合運動公園(鹿児島県天城町)
- 沖縄
- 平和祈念公園(糸満市)
- 山内公園(沖縄市)
- 諸見里公園(沖縄市)
- 宮里第一公園(沖縄市)
- 馬場都市緑地(沖縄市)
- 金武地区公園(金武市)
- 残波岬公園(読谷村)
まとめ:遊具メーカーの意図を素直に反映しないケースも
3つのすくすく系遊具場の具体例をみる中では、すくすく系遊具の採用具合はさまざま。メーカーが意図する一部を切り取って、独自解釈で構成されている場合もあることが分かります。それでも、とても面白いコンセプトの遊び場が、すくすくランドに思えます。
全国の展開例をみると、大型公園が設けられない立地条件の中で、妥協的に採用されたのではないか? と疑わしい例もあるようです。果たしてパーフェクトな形はないのか? 「子どもと楽しむ公園」シリーズとしては、探索を続けたいと思います。
関連リンク:すくすくランド(3歳未満児用遊育空間、内田工業株式会社)