借景がよい公園といえば、海や山を控えた大自然の公園が思い浮かびます。富士山を背景にした公園などはその代表例になるでしょう。それに対して出羽公園は、田園風景に溶け込む住宅街で典型的な装いをみせます。埼玉県の東京郊外で、中心市街地でない街はまさにこんな風景。いわば、ありふれた光景の中にあります。
子どもと遊びに出かけて「ここはいいな」と思える場所をご紹介しています。ところが出羽公園は、ただそれだけの存在ではありません。街中で便利な公園でありつつ、さらに子どもにとって魅力となるものを借景としています。出羽公園はそういった意味で、とても恵まれた公園なのがいいところ。
そして公園としての成長が著しいところにも注目です。総合公園としてグランドや、体育館や、テニスコートなど、スポーツ施設も揃い規模も充分。そこに、古くからのユニークな遊具に加えて、新しく導入された大型遊具の遊び甲斐がたっぷりです。
特に男の子の乗り物に対する興味を満たして、がっちりと心を掴める公園です。もちろん女の子も楽しく遊べる要素も充分。現在進行中の公園の進歩含めて、お出かけのプランに役立つようよく見てみます。
大自然の借景に恵まれた公園について、例えば富士山がよく見える公園をまとめた記事があります。
関連記事:日帰りのお出かけ東京(関東周辺)版、【富士山を眺めるおすすめ公園】
子どもが大型遊具で遊べる出羽公園をしっかり解説!
JR武蔵野線の線路に沿った敷地に、1988(昭和63)年開園したのが出羽公園。線路とは反対側、越谷市立西体育館の近くとなる一画には、ちょっと地味ながらユニークな遊具が揃います。
それに加えて登場している、いまどきの大型コンビネーション遊具。こちらはまさしく、線路の真横に並んでいます。敷地内の地上面からでも駆け抜ける電車はしっかり見えます。その上で大型遊具に上れば、さらに迫力たっぷりの眺めが手に入るのが出羽公園なのです。
いまどきの大型コンビネーション遊具はふたつ
線路際の芝生のエリア、大きな花園になっているパンジー花壇沿いにふたつあるのが、公園の新しい世代の遊具です。基礎の部分がお城の石垣のようにも見える、砦風の遊具はそのひとつ。
砦からは少しだけうねって一気に駆け下りる、ローラー滑り台を利用できます。大きな貯水池にダイブするような感覚は、とても気持ちよいです。
もうひとつのほうは、360度2回転するチューブスライダーと、ストレートの滑り台が備わるコンビネーション遊具です。
1層の塔と2層の塔がチューブトンネルで連結された、2つの部分からなる遊具になります。
2回転するチューブスライダーのスタート台にアクセスできるのは梯子のみ。少しだけ敷居が高くなっています。
高い塔からはトンネルの先になる低層のほうは、いろいろなパネル遊具で囲まれて、いかにもな幼児向け。
これは年齢によって完全に棲み分けすべきなのか? 奥の高い塔の一面も透過パネルで景色がよさそう。この窓は線路に向いています。武蔵野線が向かってくるのも、走り過ぎるのもよく見える絶好の位置にあります。
小さな子どもの螺旋滑り台へのチャレンジは、しかるべき時まで待たざるを得ないのか?
出口には龍でしょうか? キャラクターの装飾があります。意外に珍しい演出。これは誘われてしまいます。
梯子の下は、充分なスペースがあります。小さな子どもひとりだけでは不安ながら、見守りさえあれば大丈夫。下で控えていれば、子どもだけでチャレンジしてもいいでしょう。上ってしまえば、滑り台は難しくありません。のぞき窓に向かうのも安全そうです。
砦の遊具は鳥が鎮座する展望スペースが最頂上部。ローラー滑り台は、一段下からの発進です。鳥の展望塔が向いているのも線路方向。何を眺めるためのものなのか一目瞭然です。
塔に上るためにあるのは、まずは階段の道。丸太渡りの吊り橋と階段を選択できて、微妙な難易度の差がなかなか憎い工夫です。
このルートに待ち受けるのはネット渡り。苦労はするでしょうが、落ち着いて渡れば、小さな子どもでも何のことはないです。
城壁のような台座上には、梯子で直接アクセスも可能。これはローラー滑り台を何度も滑るためのショートカットでしょう。
一度はトライしたい本筋は、内部の梯子のほう。網を経由して垂直上りです。
最後は手すりに掴って台の上に!
さあ、ローラー滑り台のスタートです!
他には、いまひとつ趣旨が掴みづらい迷路風の遊具。小窓らしき穴も位置が高すぎるような… 子どもの発想ならば、どんな遊びが発見されるのでしょう?
ユニーク遊具があるのは体育館裏の児童広場
武蔵野線の線路とはまったく反対側になる公園の南側。どこが正面入口と決まっている訳ではない出羽公園ながら、越谷市立西体育館があってアプローチする道路も比較的広いこちら側が、なんとなく正面と呼ぶにふさわしそう。
3か所ある駐車場のひとつもあります。そして、その横には児童広場があります。そこには基本遊具が揃い、しかも形が独特なものです。
単独の滑り台も複合遊具のものと同様に、とんがり帽子のような形状をしています。
ブランコは人形というか、モンスターというか、何かプリミティブな形状をしています。時の流れに取り残された、孤島で継承された造形を思わせます。
この造形物はターザンロープにも採用されています。
児童広場の主役と思われる複合遊具は幅広の滑り台と…
うねうねではありますが、ストレートの滑り台を両翼に持つもの。
連絡路は旧世代の遊具らしく、とてもスリリングです。
タイヤで上るならば、最上段を目指します。この広場、実は明らかに高学年向けです。
単独の滑り台、ブランコに加えて、スプリング遊具もあります。幼児を拒否してはいないものの、かなり素朴。新しい遊具のエリアはその点さすがながら、児童広場の味もなかなか捨て難くはあります。
ひと揃いしているスポーツ施設、加えてあるのは…
子どもの遊び場だけでなく、一般的に利用されているのが出羽公園の本来の姿。バスケットボールコートが2面取れる越谷市西体育館は1ヵ月前からの申し込みで利用できます。
多目的グランドは自由に使えるスペース。
グランドの周囲には健康器具がぐるりと配置されています。
立派な相撲場もあります。
出羽公園庭球場はハード2面、オムニ2面。こちらも1ヵ月前からの受付です。体育館も庭球場も受付けは直接体育館にある窓口のみです。
バスケゴールから思う未来の出羽公園
庭球場の隣、ゲートボールなどに使えそうなスペースを挟んでバスケゴールがあります。この辺りは新しめの遊具のある場所から、園内を流れる川を渡った対岸に当たる場所です。この辺りにはまだ敷地に余裕があって、いかにも未整備な雰囲気から、公園の拡張が予感される場所です。
出羽公園の弱点はトイレ、児童広場と公園中央の2ヵ所だけ
遊び場の近くでいえば、児童広場のブランコ横に簡単なトイレがあります。
他に多目的トイレもあるものは公園中央部の辺り、グランドと体育館の間にあります。体育館は、スポーツ施設利用者以外は立ち入り禁止だと表示があります。
多目的トイレも特に子ども対応はないです。そして新しめのコンビネーション遊具がある一画には、トイレはありません。コンビネーション遊具で遊んでいてもトイレに行くときは、この中央部まで戻るか、児童広場に行くか、どちらかになります。トイレ増設は陳情されていながら、なかなか実現は難しいようです。
毎年4月に出羽チューリップフェスタが開催
出羽公園が広く皆に利用されている例として挙げられるのは、すっかり恒例になっている出羽チューリップフェスタ。出羽公園が6万本ほどのチューリップで満たされるイベントです。
最後にチューリップの鉢植えが、来場者に配られるところが注目です。ウォーターチューリップが浮かべられる調整池周辺を中心に、遊具の回りもチューリップで溢れます。パンジー花壇には花文字も描かれます。
調整池は水郷、出羽地区を象徴
チューリップフェスタでは花が浮かべられ、釣りを楽しむ人も多いコンビネーション遊具の隣にある調整池。出羽公園のある越谷市の出羽地区は、江戸時代からの新田開発の歴史がある場所です。この調整池もそんな歴史の流れの一部として今あるものです。
現在銚子市に流れる利根川は、利根川東遷事業の結果と知られています。現在の利根川上流部の流れは、東京湾に注いでいました。出羽地区もその流れの流域だったことは確かです。ただし、この辺りを流れていた一本の川の流れが変わったのではないです。流域のあまたの河川、その流量の多くが段階を経て、現在の本流に替わりました。その結果が今の利根川なのです。
注目すべきは現在の公園の北側にある出羽堀の整備が、資料を紐解くと利根川東遷事業と並行して始まっていることです。慶長から元和(1596~1623年)年間に越ヶ谷領の土豪、会田出羽が、現在公園南を流れる綾瀬川まで掘削した水路だといわれています。
この水路が寛永の頃(1624~1643年)の新田開発の大きな力になったといわれ、公園のある七左という地名はその時の新田の名前なのだといいます。出羽地区が今の姿になったのは、もっと近い時代の土地改良の成果でもあり、公園内には記念碑が立っています。これからの地域や出羽公園どんな展開をみせるのでしょうか。
出羽公園を訪れるには(アクセスについて)
住所:埼玉県越谷市七左町4-222
ここは東京郊外、周辺の県をぐるりと走っている環状路線となる武蔵野線の沿線です。よって道路として似た機能を持っている東京外環道もすぐ近くです。出羽公園の東側は東武伊勢崎線(スカイツリーライン)、西側は東京メトロ南北線に乗り入れる埼玉高速鉄道が走っていて、おのおの武蔵野線と連絡しています。
地元では草加バイパスとJR武蔵野線によって出羽地域が分断された歴史などを鑑みて、JRに対して盛んに新駅建設を陳情しています。この陳情が実ればちょうど中間地点となっている出羽公園の付近が駅になる可能性が高いです。
いまでも交通の便は良い出羽公園は、駅前公園になる可能性を秘めているようです。ただし、現状では財政的な目途が立たず、あくまで陳情されているだけの状態です。けれども情勢が変化したならば、地域も公園もさらなる発展も考えられる立地になっています。
自動車、公共交通機関どちらでも利用できるとはいえ、イオンレイクタウンなど魅力的な商業施設も近いです。駐車場も無料で充分用意された、自動車を積極的に活用したい公園といえます。
【自動車を利用する場合】
駐車場:無料(144台)
公園北側の武蔵野線に沿った駐車場と、西側の駐車場が新しい遊具に近いです。古くからの遊具のある児童広場横、体育館側の駐車場もあります。
最寄インターチェンジ:東京外環自動車道草加約4 km
草加インターからは、国道4号線の草加バイパスで北に向かい、県道324号線に入ります。東北自動車道浦和I.Cも同じくらいの距離です。上り、下り、どちらで来たかによって一般道の経路が変わります。どちらにせよ、やや分かりにくいかもしれません。
【公共交通機関を利用する場合】
最寄り駅:
JR武蔵野線、埼玉高速鉄道東川口駅徒歩25分
JR武蔵野線新越谷、東武伊勢崎線南越谷駅徒歩28分
武蔵野線新越谷駅と東武伊勢崎線南越谷駅は、隣り合わせの駅です。駅前ターミナルのひとつは共有しています。
最寄バス停留所:出羽地区センター徒歩2分
朝日自動車新越谷駅~出羽地区センター・七佐七丁目線
便によって出羽地区センターの3つ手前になる七佐七丁目が発着になります。その場合は、七佐七丁目が最寄バス停留所です。運行本数は実用に充分足りる本数です。
出羽地区センターは公園内越谷西体育館の横、七佐七丁目は武蔵野線を北に抜けた所になります。七佐七丁目の先は公園の東側を迂回しながら、ぐるりと回るだけです。公園内新しいほうの遊具のある付近への移動を考えると、どちらの停留所を使っても大差はありません。
他にタローズバス越谷駅西口~浦和美園駅路線を利用してもよいです。浦和美園駅(埼玉高速鉄道)から向かう場合は、新川町2丁目西~七佐町8丁目の間3つの停留所いずれかを利用するのがよいでしょう。
越谷駅(東武伊勢崎線)からの場合、出羽農協前で降りてしまうのがおススメです。この路線は、一度公園を離れてまた近づいてから駅に向かいます。もっとも越谷駅から向かうのであれば、新越谷駅を利用したほうがよさそうです。
まとめ:新旧遊具の味わいはそれぞれ、その違いが面白い公園
明らかに旧世代を思わせる児童広場のよき味わいも、武蔵野線が走り抜ける地の利を意識して、最大限に活用しようとしているいまどきの遊具も、一度に楽しめるのが面白い出羽公園です。近くのイオンの巨大ショッピングモール、レイクタウンもこのエリアも、水郷としての歴史を感じる景色が特徴です。開発の余地が残るエリアのいろいろな成果までも呑み込んで、一度に楽しんでみて欲しい土地柄になります。