大泉緑地の遊び場のひとつ海遊ランドは、ファンタジーに満ち溢れた場所です。海にちなんだ、船や灯台を模ったコンビネーション遊具だけでなく、海の生き物をイメージしたもののほうが、やはり印象が強いです。
子どもと遊びに出かけて「ここはいいな」と思える場所をご紹介しています。代表的なピンクのタコの遊具は、上ったり、くぐったり、滑ったりの構造物。滑る機能が沢山ついているので、いうなれば多機能滑り台になるのでしょう。
ただし、コンビネーション遊具のように、そんな分類が大きな意味をなさないくらい、自由な遊びが想像できて不思議な感じ。タコのボディにあたる部分の空洞に、なんとなく佇んでいるだけでも楽しげなのがイイです!
大きな砂場になっている場所のオブジェでもある、このタコの遊具に加えてクジラをイメージしたものがひとつ。さらに、船と灯台のコンビネーション遊具を含めて、4つの大型遊具を「回遊する」遊び場。
シャレで命名されたのではないのでしょう。けれども、大泉緑地の他のふたつのランドが、圧倒的な迫力のある遊具を中心に成り立っていることと比べると、特徴がはっきりします。まさしく回遊する楽しさがあるのが、海遊ランドだといえるのです。
ひとつひとつの遊具は、取り立てて巨大とはいえない海遊ランド。大泉緑地の中でも北の端で、自転車で行けるような近所の子どもでなければ、アクセスには距離を要します。それでも、だからといって訪問しないのはもったいない、また違った魅力があります。
海遊ランドも独自に撮影した写真を満載して、お出かけの役に立つようご紹介してみます。大泉緑地の他のふたつのランドについては、関連記事をご参照ください。
子どもが大型遊具で遊べる海遊ランドをしっかり解説!
灯台風の展望塔から眺める砂場にタコの滑り台、クジラのターザンロープと物見台、船の形のコンビネーション遊具が並んでいます。他には健康器具が若干あり、自由に遊べるグランドもあります。海遊ランドのそれぞれをひとつづつみてみます。
とにかく目立つピンクのタコでの遊び
岩場に陣取るタコがモチーフ。この大きさですから正確には怪獣映画に出てきたような、タコの怪物なのかもしれません。随所に滑り台が配置されています。やはり8本の滑り台があるのでしょうか?
どこをどう数えるのかは難しい問題です。出入り口は少なくとも8つ以上あります。ボディで開放された穴は7つ。後ろ側のタコの足2本は屋根付きでこれも坂になっています。
後の真ん中は、ワイド滑り台で間違いないでしょう。明確に上り坂だと分かる以外に、屋根付きの部分も坂にでっぱりがあります。これでは滑り下りられません。
正面から左側に伸びる足は先端で前後に分かれています。どちらも傾斜もあり滑ってもよさそうです。ちょっとニクイのがさりげなく配置された急傾斜。前後に分かれる足とトンネルになっている足の間、狭いボディの開放部から伸びています。
この先が前後の二股となる足や、岩場から上り道のあたりは、潜り抜けられる穴と、通路が回されています。タコのボディと通じている部分は、上りなのか下りなのか通路なのか滑り台なのか決めつけるのは困難です。
実際問題、岩場下のほうは分岐した先です。潜り抜けてボディ内部と結ばれる動線もあります。ある意味ちょっと迷路のよう。そしてタコのボディの内部には空洞があり、ちょっとしたスペースが! そうです、これって秘密の隠れ家のように機能しているのです。
そう考えると海遊ランド、4つの遊具を回遊するコンセプトの先が見えてきます。このアジトのような感じ、どれにも共通した持ち味だといえます。
巨大なクジラのイメージは物見台とターザンロープの部分が分離
明確にクジラらしき形のボディ部分は正確には、尻尾の部分のターザンロープとは無関係です。ターザンロープはボディから滑空する訳でもなければ、内部の坂は助走をつける場でもないです。
ターザンロープは、あくまで独立した存在。ボディ部分の、潮吹きらしきイメージになっているところは、物見台です。狭い螺旋階段を上って、クジラのボディの屋上に至ります。
それがふたつで一体となって、大きなクジラを表現しています。砂のスペースが海だとすれば、陸にせり出して何かを主張している様子に見えます。その屋根の部分の物見の台はやはり、どことなくアジト風です。
灯台風の塔はただ周りを眺めるためのもの
灯台風の塔については、遊びが仕組まれているのは、連絡路となる下の回廊のみ。灯台を模しているのは明らかな、ホンモノなら点灯する辺りは、あくまで周りを眺める機能だけです。
ふたつある急な階段を上った先の丸いデッキは、そんな役割ならば極めて機能的。360度の展望が望めます。
もしや塔の内部には仕掛けが? と思ってもこちらも階段です。外階段ふたつは回廊から、内部の螺旋階段は地上から通じています。
こちらはもう、言わずもがなの展望アジトそのもの。海遊ランド全域をすべて見渡せる場所です。進入者の様子も、手に取るように分かってしまいます。
上層部からはない滑り台は、極めて一般的な形長さのものが塔の真下の回廊から出ています。すぐ横に階段があるので、ある意味よくある形の滑り台よりも上り易く、滑りやすいものという捉え方だってできます。
回廊はただの通路と限らず、なにかと仕掛けられたものです。丸太吊り橋の連絡橋など長さがあります。
塔を挟んで両サイドの外階段に向かって2列の回廊があるレイアウト。そこを連絡するのが、丸太の吊り橋という図式です。
片方には、うねったラダーとネットが続く道もありです。当然少し挑戦的な設定。ラダー部分は省略できるように柵がないです。ネット部分から始めても大丈夫です!
もっともそんな心配をするまでもなく、簡単な坂道もあります。滑り台のところには階段がありました。また塔の内部には螺旋階段。海遊ランドを眺めるのに、幼児であっても困ることはないです。
2本マストの帆船もデッキが沢山
艫(とも)の部分が幅広の滑り台になっていて、途中はなかなかの急傾斜。場合によっては、対象年齢が一番高そうな船の遊具です。滑り台はもっと穏健なものが舳先(へさき)の方の両サイドにあります。
船首側のマストの部分が、やはり展望台です。マストの前後を連絡する遊具がよく見られる中、海遊ランドでは一方通行。ここまで来たら、帰りは同じ道を戻ります。
通行の都合上、前後に抜けていたほうが便利なので、この形にはこだわりを感じます。敢えて前には抜けられないようにしたために、舳先の形にリアリティがあるのです。
あたかも船嘴(せんし)=先頭の棒、斜檣(しゃしょう)に帆をはる作業場を表現していて、本格派といえます。そしてこの部分があるから、下には隠れる場所ができます。遊びの面では、リアリティ云々よりもこのスペースが重要。
艫の部分の滑り台に向かうためには、階段のみならず、坂とロープが用意されています。
その後は滑り台に向かうか、さらに上ってマストへ行くか、下に向かうか道は分かれます。
もっとも下に向かっているのは、どちらかといえば滑り台やマストに向かうショートカット。
横の階段を使って、滑り台の下を抜けるルートと考えたほうが順当。ショートカットというには回り道なので、別ルートといったほうが正しいかもしれません。
そして、こちらのデッキ下もまた隠れ場所には絶好のスペースになっています。
緑地、公園、違いは何?
海遊ランド内では、遊具のある場所を隔てるように、橋が架かっています。港町の表現なのか、ファンタジーな仕掛けは尽きないうちのひとつのネタ。各遊具アジトを回遊する気分も盛り上がるというものです。
さらに隣には自由に遊べる広場。草地と土の部分が両方あります。休憩所に使える屋根付きの場所もあります。
ちょっとした空地は反対方向になる大泉池側にもあります。そちらには健康器具もちらほら。
大泉緑地はいまでは街のど真ん中。だからこそ、いつも自転車で訪れる子どもたちで一杯の場所です。海遊ランドは特に北側に広がる界隈からなら、とてもアクセスのよい場所です。
ところでこんな大泉緑地、なぜ大泉公園と呼ばず、大泉緑地というのでしょうか。大阪には四大緑地とされる場所があります。ここの他には服部緑地、久宝寺緑地、鶴見緑地になります。
大泉緑地は、今の形に整備することが構想された1968(昭和43)年よりずっと前から確保されていた土地です。ただし、公園として確保されていながら、整備が進まなかったのではありません。
大泉緑地はそもそも、防空緑地として確保された土地なのです。それは1941(昭和16)年に遡ることです。つまり戦火から街や人を守るために用意された土地でした。大阪の四大緑地はすべて同じ経緯のものです。
こうした動きに先駆けて、都市をグリーンベルトで囲うというアイディアが世界的にありました。例えばパリの街などは、東京の山手線の内側エリアに近い面積の20区を、ペリフェリックと呼ばれる環状自動車道路が囲い、その周囲の多くはブローニュ、ヴァンセンヌといった森、ラ・ヴィレットなどの公園や公共施設が並んでいます。
日本ではまず東京で、この流れに沿った計画が立てられます。その後はむしろ戦災に備える防空空地の確保として進められ、東名高速道路の東京(用賀)I.Cの隣にある、砧公園や足立区の舎人公園などが、この名残りになります。舎人公園などはわざわざ防火のために築山が行われて、今ではそこを利用した遊び場も作られています。
関連記事:子どもと無料で楽しむ都立舎人公園
そうした用地が敗戦後に、概ね公園として活用されているのが現状。東京では緑地という名前は使われませんでした。ただし神奈川県では、等々力緑地(川崎市)、三ツ沢緑地(横浜市)など、たまたまJリーグの競技場で知られる場所などに名前が残っています。
また、名古屋では大高緑地などが同じ事例となります。しかも大高緑地は、もともと山林が多く、農地解放による所有権の移転が、ほとんどなかったという事例にもなります。他の緑地では、戦争による食料事情の悪化から、耕作地となっていたことが多かったのです。
GHQはこのような土地も、農地解放の対象にしました。それにより払い下げられてしまった結果、後になんとか買い戻せたケースもありました。東京ではこの時に、買収済みの緑地の63%が失われることになり、良好な都市計画は大打撃を受けて、今に至っています。
関連記事:子どもと無料で楽しむ公園 大高緑地
名古屋のケースでは、「子どもと楽しむ公園」シリーズでも注目した戸田川緑地などもあります。この場合は防空緑地との関連はなく、地域が名古屋と合併した後に、緑地として都市計画決定した場所が、公園として整備が進んだものです。
関連記事:子どもと無料で楽しむ公園 戸田川緑地
公園と緑地とは? という視点からは名古屋の戸田川緑地のような、新たに意識して緑地として指定できたケースで、公園としての整備や、なごや西の森づくりなどの緑化活動が進むケースもあります。とはいえ、緑地と名乗るものには歴史的経緯があることも多く、その目的は必ずしも公園としての充実ではなかったことになります。
いまでは都市緑地法などの法整備も進み、都市計画の中で公園と緑地は、ともに相まって良好な環境を作るものとされています。大泉緑地はいまでは、あくまで公園として維持されています。それもあって遊び場はどんどん充実してきました。ただし、それは時の流れによるものです。
遊び場が離れた場所に点在することなどは、大泉緑地の歴史を物語る名残りでもあるといえます。こうしてできあがった超絶の遊び場、歴史的試練を乗り越えた存在でもあります。せっかくなので、どんどん活用しなくては、もったいないものだといえるでしょう。
大泉緑地を訪れるには(アクセスについて)
住所:大阪府堺市北区金岡町128
連絡先:072-259-0316(管理事務所)
大泉緑地の詳しいアクセスや概略などは関連記事をご参照ください。
関連記事:子どもと無料で楽しむ公園 大泉緑地
駐車場:有料(420円~1030円、24時間まで)
海遊ランドから近い駐車場は第1駐車場。とはいえ少しだけ距離があります。わんぱくランドは、第1駐車場の南側すぐ隣なので、自動車での利用の場合、海遊ランドを目指すには、ちょっと状況が違います。
海遊ランドへは駐車場の北側に停めて、園内の周回路を北に向かった後、大泉池が見えてきたら、池に沿って少し行ったところです。
最寄り駅:地下鉄御堂筋線新金岡駅徒歩
北区役所や地下鉄の新金岡駅から徒歩で向かうと、15分程度で公園管理事務所や金岡口噴水がある公園入口です。ここに第1駐車場やわんぱくランドがあります。この公園入口から海遊ランドまでは、園内を歩いて駅からと同じくらいの距離です。
仮に海遊ランドだけを目指す場合、北側の南花田町付近にあるバス停留所が分かるならば、そこから向かうのも手です。
まとめ:4つのアジトを回遊する楽しみ、近所の子ども以外でも注目
海遊ランドにすぐにアクセスできる子どもは、とても幸運に思える充実の遊び場。そうであって特に自転車があれば、冒険ランドも、わんぱくランドも、一気に遊べるのですから。
そんな子どもたちに独占させるだけでは、ちょっともったいない面白さがあります。大泉緑地の遊び場の中では、移動の手間が一番あったとしても、ファンタジーで自由度の高い遊びが待っている、海遊ランドも忘れず訪れて欲しい遊び場です。
公式サイト:大阪府公園協会 大泉緑地