子どもと公園で楽しむ時に、やはり気になる遊具。持参した道具を使って芝生広場で遊ぶのも定番ながら、公園それぞれの一番の特徴になるのはどんな遊具があるのか。そんな遊具はどれもが、それぞれの思いを込めて作られています。
公園遊具を楽しく遊んでもらおう! と日々研究と開発を重ねる人たちがいます。それが「遊具メーカー」、子どもを安全に楽しく遊ばせる専門家になります。そうした公園遊具の中でも目立って面白く、あれば皆を虜にしているものに、ふわふわドームがあります。
遊具の秘密を徹底解明編part2ふわふわドーム 理想のものは?
とはいえ、ふわふわドームはあったらうれしい、珍しいほうの遊具。設置するにあたっても、遊んでもらうことになっても、管理するうえで難しい面もあったりします。実際にふわふわドームに込められたいろいろは、なかなか奥が深いものなのです。
ふわふわドームがこれだけ魅力ある遊具になっているのは、遊んでいるときに直接見えているものだけでなく、子どもの力を引き出して、遊び心を存分に刺激する工夫と、それを可能にする技術が秘められているから。
設置が簡単なものではないだけに、ふわふわドームの持つ可能性を生かした理想の形は、まだまだもっと進歩した姿を描いていけます。ふわふわドームは、公園遊具の主役足りえるもの。そのパフォーマンスをフルに発揮したら、どんな楽しい遊び場になるのか?
理想のものはどんなものなのか? すでにふわふわドームの設置で大きなシェアを占めている太陽工業でも、もちろん提案はあって、公園設置者へのプレゼンテーションが行われています。お話を伺えば、それはとても期待できるものです!
果たしていつどこで、そんなもっと進歩した理想の形が実現していくのか、それは楽しみにするとして、やろうと思えばできる極めつけのものは、どんななのか。こんなものなら考えられるという形、ご紹介してみたいと思います。
理想のふわふわドームの条件とは?
ふわふわドームが設置される場合に、望ましい条件はどんなものになるのでしょうか。真っ先に挙げたいのは、広いということです。ふわふわドームの面白いところは、飛び跳ねて遊べるところ。
ふわふわドームの理想を追求その1:できるだけ広いこと
構造的にも空気の力を借りて、自分自身のジャンプ力に頼らずとも、普通じゃない浮遊感と優しさで大胆に体を動かせる! といった面白さがあります。飛び跳ねて体を動かすからには、安全のためにもスペースが必要です。
設置するのに広い面積が確保できれば、相対的にはひとりあたりの面積が、多く確保できることになります。それだけ思い切り楽しめるという点で、ふわふわドームは総面積が大きければ大きいほど、理想的ということになります。
またふわふわドームの面白さは、コブのように盛り上がる部分がどのくらいあって、どのような配置になるかでも変わってきます。どれだけ楽しめるコブの配置にできるかどうか、自由に設計する余地は、設置面積の余裕に依るのは当然のことです。
効果的に沢山のコブが設置できれば、それだけ跳ね心地が多彩になります。これは単純にスイートスポット的な部分の跳ね方が、コブの形によって違うだけでなく、コブとコブを繋ぐ部分の構造にも秘密があるからです。
このため結果としてふわふわドームには、その場で飛び跳ねる楽しさに加えて、フワフワ軽快に移動できる面白さもまた、生まれることになります。その時の移動のしやすさ、いろいろな感触を演出できる余地も、広ければそれだけ増すことになります。
ふわふわドームの理想を追求その2:大きさと趣向を変えてたくさんあること
確かにひとつのふわふわドームが大きなもので、違う性質のパートを盛り込んでいけることは、理想的なものを作るうえで重要な要素です。ただし、子どもが思い切り遊べるという点では、ひとつひとつが大きいだけでは解決し切れない課題が残ります。
ふわふわドームは現状では、幼児から児童を対象にすることが多い遊具です。もちろん中学生や高校生、または大人であっても楽しく遊べるものとはいえ、身体能力がピークを迎えるような頃、高度な技を試みるような利用の仕方は、遊具としての目的には適さないです。
ふわふわドームそのものには、そういったスポーツ施設のような機能までは持たせないとして、幼児から児童に対象を絞ったとしても、それでも年代的に年齢による身体能力には、大きな差が出てしまうことになります。
だからこそ、ひとつのふわふわドームでなく、いくつかを設けてそれぞれの能力にあった大きさ、高さとして、コブの配置も考えたほうが、合理的という面があります。どこまで子どもの能力を引き出すかは、年齢で対象を区切る配慮で、適切にコントロールできます。
スポーツレベルで専用のものを作ることも、やぶさかではないでしょうけれど、とりあえずふわふわドームは自由に気ままに遊ぶものです。すでに競技としてなら体操のトランポリンがあり、専用の設備があります。
むしろ対象を細分化してエリア区画をきっちり行い、いろいろな年代の子どもが遊べるようにするならば、ハイハイの乳児が遊ぶふわふわドームだって考えられます。大きさと趣向を変えてたくさん用意するなら、そんな対応だって可能なのです。
ふわふわドームの理想を追求その3:できるなら屋根を作って全天候型で遊びたい
ふわふわドームに限らず、遊び場や遊具はどんな天候でも遊べれば、それに越したことはありません。屋内の遊戯施設にふわふわドームがあれば、それはそれで便利でしょう。ただふわふわドームはひとつひとつの面積は、大きければ大きいほどよいものです。
趣向を変えて数が用意できれば、これも多いほど理想的です。爽快にジャンプしたりして遊ぶものですから、それで周りの景色が違って見えるのも大切な要素。遊んでいるときの眺めだって重要です。
ふわふわドームが砂場に設置されるのは、膜素材のところから転落した時のショック低減のためです。もちろん他の緩衝材でもよいとはいえ、諸条件考えると砂を利用するのが最適解になっています。
こういったことを考えるとふわふわドームは、屋外にあるほうが理に適っているのです。その上で、ふわふわドームを雨でも暑くても大丈夫な、全天候型の施設にすることは可能で、実際にすでに例のあることになります。
どうすればいいのかといえば、それはふわふわドームをすべて覆えるような、大きな屋根をかけること。これもどんなものでも構わないとはいえ、やはり最適解は出ていて膜素材の大屋根にするのがよい感じです。
いずれにせよ、本体部分に柱を立てる訳にはいきません。これは当然、設計上云々ではなく、あったら危険があるため、思い切り遊べなくなるためです。また、都市公園については、建蔽率の法規制があり、むやみに建築物を設置できないこともあります。
建築物に当てはまるケースでも、開放型の屋根付広場などとして高い開放性を有するならば、建蔽率の規制の緩和もあります。やはり膜素材のものが作り易いのです。そして膜素材ならば、適度に日照を遮りかつ、光が透過するようにコントロールもできます。
ふわふわドームの理想を追求その4:保護者の見守りスペースは必須
子どもが夢中になる遊具だからこそ、見守る大人のスペースも考えたいのがふわふわドーム。それも遊びを見守りながら、時にはリラックスできるのが理想。ふわふわドームに遊びに来たならば、一緒にドームの上で付き添うこともあるでしょう。
もし、子どもがとても夢中になってしまったら、いつまでも遊びたい気持ちを尊重したい時もあるのがふわふわドーム。少し放任して離れて眺めるかどうかは、身体能力の発達次第でもあり、その日その時によることでもあります。
保護者が子どもの元気には、もうついて行けなくても、休憩しながら見守りもおろそかにならないのが望ましいです。子どもの気持ちも尊重できて、保護者のことも配慮するならば、傍らの見守りスペースは、休憩スペースとしても快適ならば、ありがたいというもの。
となるとあったらうれしいのは、これまた屋根。日差しを和らげて欲しい場合は多いはずです。例えふわふわドーム全体には無理であっても、休憩スペースにはシェードがあったらうれしいです。
ふわふわドームの理想を追求その5:コンビネーションも楽しみたい
ふわふわドームは面積を広くしてコブを増やせば、遊びのバラエティはおのずと増えるものです。さらにコンビネーション遊具の感覚で、他の種類の遊具との連絡があれば、もっと楽しくなりそうです。
ただし、ふわふわドームに直接何かを接続するのは構造的に難しいと思われます。そこでふわふわドームの設置環境として、ほかの遊具と一体で楽しめるよう、エリアとしての工夫があればさらに理想に近づきます。
理想を追求したふわふわドーム、どんな風に実現可能?
理想のふわふわドーム、そんな風に言えるものをつくるための条件を5つほど考察してみました。それがあくまで理想でしかないのか、それなら今でもやろうと思えばできるのか、そしてできるならばどんな風に可能なのか? そんな問いには十分可能だ! と答えられるのです。
遊具の願いや狙い、施された工夫など遊具の秘密を徹底取材!
子どもと遊びに出かけて「ここはいいな」と思える場所をご紹介している「子どもと楽しむ公園」シリーズ。各地の公園の面白さ、遊びのポイントや、出かける時に知っておいた方がいいことなどお知らせしています。
さらに特別編として公園遊具に込められた願いや狙い、秘められた工夫など、遊具の秘密を遊具メーカーに直接聞いてお伝えするシリーズがあります。そうして公園遊具の主役足りえる、ふわふわドームに徹底的に迫る機会を得ました。
ふわふわドームを施工できる企業は多くなく、そんな中で大きなシェアを占めているのが太陽工業株式会社です。理想のふわふわドームを実現することが可能かどうか、実現のうえで問題があるとしたら解決できるのかなど、お聞きできたことをお伝えします。
太陽工業に聞く!ふわふわドームのこと
お話を伺えたのは、太陽工業株式会社広報部門の上田テツヤマネージャーと丹羽安里香さんです。
フェンテ記者:
太陽工業の製品は、コンビニエンスストアで売っているようなものではないですから、誰もが知っている会社ではないと思います。それでも実は、ふわふわドームも作っているということを知る前にも、お名前は存じておりました。
上田マネージャー:
ありがたいことに、公園だけでなく公共施設など、当社製品はいろいろな場所で使って頂いていますが、商標や会社名は書かれていないと思います。一般的にはご存じでない方も多いのでしょうね。
フェンテ記者:
それまで目にはしていても気づかなかったのでしょうけれど、UAE(アラブ首長国連邦)の首都アブダビにある、F1グランプリを開催するヤスマリーナのサーキットに行った時のことです。
上田マネージャー:
はい確かにそこでも施工しています。日本に限らず、海外の競技場で採用して頂くことも増えています。
フェンテ記者:
ヤスマリーナはいま、F1グランプリを開催するサーキットの中でも、施設が立派で競技関連の人も観客も、快適に利用できると評価されているみたいです。サーキットのあるヤス島は砂漠の島だったものを、王様が威信をかけてリゾートとして開発していますね。
丹羽さん:
太陽工業の膜構造物は、お役に立っているようでしたか?
フェンテ記者:
世界初のフェラーリのテーマパークや、ヤスモール、巨大なウォーターパークなど、目を見張る施設が並ぶ中、ヤスマリーナのサーキットは、そのものも立派ですが、特にスタンドを覆って日差しから守ってくれそうな、巨大な白いシェードが印象的でした。
夜景も美しいポンピドゥーセンター・メスの膜屋根も太陽工業のもの
丹羽さん:
膜構造物のものは、観客のみなさんが砂漠の日差しも穏やかに感じてもらえるようにできます。また、ナイター設備があるような競技場なら照明効果も高めますし、見た目も映えるんですよ。
フェンテ記者:
そうなんです、ここのグランプリは砂漠の太陽が沈む時間に始まって、照明の元でゴールします。昼間に外から見た時も、大きさ、白く輝く様子が感動的だったのですが、照明の中で見ても本当にきれいで、それが日本の企業が作ったものだと聞いたときには、ちょっと驚いたのです。
上田マネージャー:
光触媒でセルフクリーニングするので、美しさは保たれますね。
フェンテ記者:
そうなのですか、道理で白く輝いているはずです。そんな秘密もあったのですね。ともかくその時、この手のもので圧倒的な技術を誇る太陽工業という会社がある! と知ったのでした。それで公園の特集をするなか、ふわふわドームについて注目すると多くの場合、作っているのがあの太陽工業か! と分かったのです。
上田マネージャー:
ふわふわドームの施工例もどんどん増えています。作っている会社も他にあまりなく、シェアはかなりを占めることができています。
フェンテ記者:
そもそもふわふわドームというのは、どこが考えたものなのですか?
上田マネージャー:
膜状トランポリンというのは、登場して30年くらいになるでしょうか。同業のもう一社と、ふわふわドームという名前含めて、協議してやってきました。
フェンテ記者:
なるほど、そういうこともあっていろいろな呼び方の場合があるのですね。
丹羽さん:
そのもうひとつの会社は、変遷がありながらいまでもライバルです。
フェンテ記者:
ただの膜を張ったトランポリンのようなものを、ふわふわドームだといっているのも見たことがあります。
上田マネージャー:
太陽工業でご案内しているのは、あくまで送風装置で内膜内の空気圧をコントロールする仕組みのものです。もっとも「膜や」を自称し、膜素材を主力にさまざまな製品をお届けする会社なので、その膜を張ったトランポリンというのも作れます。
フェンテ記者:
コンビネーション遊具に組み込まれていたりすると、ネットよりも贅沢で面白い素材ですね。
丹羽さん:
360°滑り台という、膜をぐるりと一周張った遊具もやっていますよ。山でも谷型でも大丈夫ですし、もっとシンプルな滑り台として使って頂いてもよいです。ネットと組み合わせても面白いです。
フェンテ記者:
遊具についてもふわふわドームだけの会社ではないのですね。
上田マネージャー:
もともと遊び場全体を提案しています。化学繊維や樹脂などを加工して機能を持たせるのは専門ですから、例えば擬岩を作って遊具に活用するなどの例もあります。ただ、ふわふわドームは特に、独自性の高いものとして育ってきてくれました。
フェンテ記者:
ふわふわドームはどのくらいの大きさまで作れるのでしょうか?
丹羽さん:
ご依頼頂ければ、どのくらいでも作れます。例えば、膜屋根のドームですけれど、イギリスのミレニアムドームは直径365 mあるんです。
上田マネージャー:
膜素材を溶着していく方法も、特許を持っている光触媒のセルフクリーニング機能同様、磨きぬいてきたものです。設計時には規模の大小にかかわらず、構造的な裏付けをしています。大きさに特別なご要望があっても、しっかりお応えできる技術があります。
フェンテ記者:
例えば大きなほうでいうと、どんなものがあるのでしょうか。なおかつ変わった特徴があるものとか…。
上田マネージャー:
たくさんのコブを作れていて、大きくて特徴があってというならば、ひとつの例ですが京都競馬場のふわふわドームはコブが全部で6つです。ひとつを中心に取り囲むように残りが並んでいて、面白い形をしているように思います。
フェンテ記者:
大きさでいえば、刈谷ハイウェイオアシスのテント屋根や、鞍ケ池公園の大きな膜屋根のフリースペースも、とにかく白くきれいに輝いています。もしかして、やはり太陽工業のものですか?
上田マネージャー:
どちらもそのとおりです。あれだけのものを頻繁に洗浄する訳には行かないので、セルフクリーニングできるのは、ランニングコストの面でも、お役に立っているかと思います。
フェンテ記者:
鞍ケ池公園は、膜屋根の隣のスペースにふわふわドームもありますね。
上田マネージャー:
そちらも当社が納品したものです。
フェンテ記者:
やはり高い技術をお持ちの企業ですね。
上田マネージャー:
ふわふわドームで使う膜はもちろん、つねに素材開発を行い特別な工夫をしています。生地の製造はメーカーに委託していますが、設計、膜の加工、施工まで一括対応する体制です。その中で技術の独自性が高いのは、技術研究所が重要な役割を果たしています。
フェンテ記者:
資料で拝見した世界で唯一の膜構造の技術と、素材の研究施設ですね。光触媒とか、紙にリサイクルできちゃうという、ケナフの天然繊維から作ったというケナフ膜材とか、面白いしスゴイです。環境汚染対策に使われるものにも、守備範囲は広がってるんですね。
上田マネージャー:
独自技術に本格的に注力を始めた時期と、ふわふわドームの開発は重なっているのですね。膜建築物の耐久性を考え紫外線対策をすることは、ふわふわドームのメンテナンスに通じます。
フェンテ記者:
世界中の著名施設で使われて、企業やそれこそ一国の抱える課題にも対処される技術のようですが、そこで蓄積されたものが、さりげなく遊具にも役立っているのですね。
上田マネージャー:
どんなものでも技術的には可能といっても、遊具ですから安全に楽しく遊べることも大事です。ふわふわドームも山の高さを競う時期もありました。そのようなご要望に対してどうしたらよいのか、遊具の業界団体と議論を重ね、安全基準を策定しました。
フェンテ記者:
材料や加工の開発だけでなく、使い方のインストラクションもできるような研究もしているということですね。
上田マネージャー:
大きな膜構造の屋根を作るときに張り方ひとつとっても、遊具を考える時にも役に立っています。ふわふわドームの安全性を考える時にも素材の使い方の研究、施工の技術は重要なのです。
丹羽さん:
膜素材も屋根のものより、ふわふわドームの外膜の素材のほうが柔らかかったり、そういう工夫もあるんですよ。
フェンテ記者:
なるほど! 国営讃岐まんのう公園では、ふわふわドームにそういった、大きな膜構造の屋根がかかっていますね。
上田マネージャー:
はい、他にも福島市の十六沼公園も同様ですし、同じ県内の南相馬市のかしまわんぱく広場でも、ふわふわドームやコンビネーション遊具も含めた広場全体を、柱のない明るく涼しい空間で覆っています。
フェンテ記者:
暑くても、雨でも遊べるものでいいですね。開放的でふわふわドームの雰囲気を損なわずに、優れた機能がついてくるのは膜素材ならではだと思います。
丹羽さん:
メンテナンスなど管理が楽になる機能もありますし、計画の内容にもよりますが、当初の施工時の予算を削減できる面でも、膜素材の構造物は公園におすすめです。
フェンテ記者:
お話を伺えばなるほどと思いますが、これだけあれもこれも太陽工業のものなんだ! という例に溢れていますよねー。特にいつでも白く輝く膜構造物を見たら、太陽工業のものだともう判別がつきそうです。いろいろとありがとうございました。
【フェンテ記者の感想】
広い面積の物を作るという意味では、何ら問題なく、いろいろな種類のものを作るという点でも、しっかりとした研究からコンサルティングして貰えそうです。快適な空間づくりには、膜素材はもってこいのようで、ふわふわドームを覆いつくして全天候型にするのも、休憩スペースを作るのにも役立ちそうです。
遊具のコンビネーションとして、膜素材の滑り台であるとか、面白い活用法がありそう。確かにふわふわドームの周囲を膜素材の滑り台が360°囲ってあって、それを滑って飛び跳ねにゆくなんてのも、ものすごそうです。
もっとも場所もさることながら、そこまで作り込んだら、果てしなく予算も必要になりそうです。それでもそんな夢のような遊び場だって、実現可能なのですね!
ふわふわドーム技術的なポイントを徹底解明
ふわふわドームという呼び名は、固有名詞となりつつあるものの、太陽工業が同業の会社と協議しながら同様のものを開発してきた経緯もあり、商品名ではあれ商標ではないのが現状です。だから、主流派となったものとは違うものもあり得ます。
つまり空気で膨らんだものの上を飛び跳ねるエアー遊具や、膜構造の素材を張った張力による、本来はトランポリンのようなものを、ふわふわドームと呼ぶことがあるやもしれません。
けれどもいまや、ユーザー目線からいってふわふわドームと認識するものはやはり、白い膜状のものが空気で膨らんで、その上で遊べるものだといっていいでしょう。こうしたものを本物のふわふわドームとする! といって差し支えない状況です。
太陽工業がふわふわドームとして案内しているのは、「空気の力を利用した膜のトランポリン」としています。そして太陽工業が施工する場合、ただ空気を充てんした風船のようなものを膜で覆っているのではありません。
空気は常に送られ、場合によっては排気して圧力は、一定に保たれる仕組みになっています。そのための送風設備が必ず近く(技術的には40 m以内の場所)に置いてあるのが特徴になります。
そのように気圧制御されたエアーが送られたところが内膜と呼ぶ部分で、ふわふわドームにコブのような膨らみがあるのは、こんな仕組みが隠れているからなのです。
ひとつの山のようになっている場合は、内膜がひとつ。ふたつの膨らみがあるならば内膜がふたつあるということになります。こうした内膜のうえに、目に見えている外膜を被せることで、ふわふわドームができています。
このため内膜が作るコブの部分は主に空気の力、コブとコブの間の部分は外膜が張られているテンションの力が、ふわふわの原動力になっているのです。こうして内膜の大きさ、高さ、数と配置を変えることで、いろいろな遊び心地が演出されることになります。
- 太陽工業で用意する標準的な6つのタイプ
- Aタイプ ひと山のもの
- Bタイプ 小型のひょうたん型のふた山タイプ
- Cタイプ Aタイプのものがふたつ並ぶようなタイプ
- Dタイプ バリエーションの違う4つのコブを持つ最大のタイプ
- Eタイプ 中型のひょうたん型のふた山タイプ
- Fタイプ 3つのコブを持つ中型タイプ
もちろん、特注でどのようなものでも設計、施工できます。ちなみにこういった大きさによるとはいえ、おおむねふわふわドームの維持費となる電気代は、月額2000円~4000円程度(街路灯一灯相当)とのこと。ランニングコストは思ったより安いと感じました。
利用時間以外に空気を抜くのも、開始時に空気を入れるのもタイマーによって管理できます。ただし、ふわふわドームの寿命を考えると、こうしたエアーアップ、ダウンはできるだけ避けた方がよいそう。
夜間の立ち入り等が気になる場合は、囲いを作ってそちらを施錠、開錠するほうが持ちはよいということのようです。
太陽工業ってどんな会社!あの遊具を作るメーカーをご紹介!
始まりは身近なテントを作る会社でした。日常暮らす場所以外で雨風をしのぎ、そこでも快適さ、機能の高さを追求する仕事は、個人の余暇の活動にとどまらす、産業分野や人が集う場所を対象にして、公共の場にも広がってゆきます。
太陽工業が圧倒的な名声を獲得するのは、やはり膜素材の追求と、その利用に際しての画期的な発想が基礎になっています。大阪万国博覧会で世界中から集まった人に、巨大空気膜構造物のパビリオンを披露しました。
そもそもの発想も、エアーチューブで支持する従来とは違う発想のテント。それはポールを利用するものでないアイディアが原点。進化を続けたこの発想に連なる技術は、アメリカ館、富士グループ館など、世界初の試みとして大きな注目を浴びることになったのです。
この成果は後に東京ドームの屋根部分として、さらに発展して結実します。これ以降太陽工業は、膜構造建築物でゆるぎない立場を確立することになり、世界のあらゆる場所で太陽工業のメンブレインを利用した建築を目にすることになります。
ふわふわドームのすごさ、楽しさしか実感できていないとしても、実際には意識することのなかったいろいろなお出かけ先で、すでに太陽工業の膜素材には、お世話になっているはずです。
また、大阪万国博覧会では建築に取り込まれる技術以外にも、マッシュバルーンも手掛けています。機能的には来客を日差しから守る憩いの場を作るものながら、一大イベントにふさわしい印象的なオブジェにもなっています。
太陽工業自身が施工した工作物という点では、ふわふわドームに通じるものがあります。人が集う場所において、優れた機能を提供している会社として、大きな括りで説明できる会社です。日常的なこと以外でも、災害時など素早く人を守る場所を提供できる点でも、とても頼りになる会社なのです。
そのうえで、公園でのふわふわドームや、セルフクリーニングでまばゆい白さを保つ大屋根などにみられるような、優れた技術で人に感動をもたらすことも、得意な会社だといえるようです。
もっとも、多くの人が目にする機会のある場所だけでなく、玄人筋だけが知る世界でも太陽工業は活躍しています。建築物で使われる膜素材ではすでに、シースルーソーラー(透光性太陽電池)が発電を行っています。
保冷・保温までできる膜屋根やテント構造物の対応、そこで使う高機能なコンテナバックにも技術が生かされています。土木工事における環境保全対応でも、太陽工業の膜製品やテント構造物は大きな役割を果たしているのです。
皆の暮らしをよくするうえで、身近な暮らしの中に限らず、大変な貢献のある企業だ! といっていいのが太陽工業になるのでしょう。
太陽工業株式会社概略
創業:1922(大正11)年能村テント商会創業
設立:1947(昭和22)年太陽工業株式会社設立
本社:
(東京)東京都世田谷区池尻2-33-16
(大阪)大阪市淀川区木川東4-8-4
連絡先:06-6306-3033
公式サイト:MakMax太陽工業株式会社
例えばオノマトペの屋上、ユニークな施工例の遊び場
白く輝きながら、子どもの遊びに手を貸して、優しく軽快に楽しませてくれるふわふわドーム。どこか優美なその姿からも、まるで遊具の女王様のよう。あらゆる遊びが組み込まれてそびえ立つ大型コンビネーション遊具を王様とするならば、そこに簡単に組み込むことのできない点でも、遊具の世界に君臨するかのようです。
すでに百を大きく超えて、2百例を目指すくらいに普及してきたふわふわドーム。なかには稀な施工例もみられます。それは公園選びの参考書!遊具の秘密を徹底解明編としても注目する理由のある場所。オノマトペの屋上は富山県立美術館に作られた遊び場です。
この屋上の遊具は美術館らしい、哲学が込められたものが揃っています。「子どもにとって、学びも遊びも芸術も、境目はない」というコンセプト。どんな風にかかわるのか、それは子どもの自由だからこそ遊具、子どもの発想が自然に湧き上がるならば、それが最高です。
そんな志向のオノマトペの屋上では、太陽工業株式会社のふわふわドームと、遊具の秘密を徹底解明part1でお話を聞いた遊具メーカー、株式会社ジャクエツの抽象的なオブジェ系遊具が競演を果たしています。
ふわふわドームも屋上に設置されるというユニークな例のもので、抜群の眺望を伴うものになっています。日が暮れた後は遊具では遊べないものの、その時にはキレイな夜景を引き立てるオブジェになります。この存在感、ふわふわドームの一面として注目です。
まとめ:ふわふわドームに秘められたものの奥深さには驚嘆
なにげなく思い切り自分の力を開放できるふわふわドーム。なんのことはなさそうな、ただ膜で覆われたものにみえる遊具ではあります。それにしては巨大なものが出来上がった時には、ただならぬ感動を覚えるものです。
それもそのはず、シンプルな見た目だけで判断できないのがふわふわドーム。どうしてあれほどの規模のものでも作ることができ、大きくなっても冗長にはならず、ますます魅力が増してしまうのか。秘められた技術や工夫を思えばしっかり納得できるというもの。
ふわふわドームの施工で大きなシェアを占める太陽工業。加えて大きな白く輝く膜素材の屋根があったなら、いつもきれいで感動的なのも、そしてふわふわドームがたまらなく楽しいのも偶然ではないこと、思い起こして頂ければと思います。