公園で楽しむ時に、やはり気になるのは遊具。持参した道具を使って芝生広場で遊ぶのも定番。けれども、公園それぞれの一番の特徴になるのは、どんな遊具があるのか。そんな遊具はどれもが、ひとつひとつの思いを込めて作られています。
公園遊具を楽しく遊んでもらおう! と日々研究と開発を重ねる人たちがいます。それが「遊具メーカー」、子どもを安全に楽しく遊ばせる専門家になります。
子どもと遊びに出かけて「ここはいいな」と思える場所をご紹介している「子どもと楽しむ公園」シリーズ。各地の公園の面白さ、遊びのポイントや、出かける時に知っておいたらいいことなど、お知らせしています。
遊具の秘密を徹底解明編part1 ローラー滑り台
遊具の秘密を徹底解明編は、公園遊具に込められた願いや狙い、秘められた工夫など、遊具の秘密をメーカーにご協力頂いて、直接聞くシリーズです。そうすることで、遊んでみて感じたことの意味を、もっともっと正確にお伝えできるからです。今回のテーマは、ローラー滑り台についてです。
遊具の願いや狙い、施された工夫など遊具の秘密を徹底取材!
作った側、設置した側などのご意見を取材して、「公園選びの参考書」たりえる正確な情報、これまで知りえなかった独自の秘密など織り交ぜてお届けします。いつも遊んでいる遊具の見どころが分かったり、ホントの名前があったりするの? なんていう疑問にもお応えできたらいいな! という企画です。
公園で遊んでみて、充実した時間を過ごせて、心から満足できた時、今日は楽しかったね! と思えた瞬間の余韻を、だから面白かったんだ! という確信に変える情報。ただ遊んだだけでは分からないことも、お知らせできるはずです。
さらに、いつも遊んでいる公園にあるいろいろな種類の遊具、お気に入りのジャンルには他にどんな遊具があるのだろう? とか、どこかで遊んだ記憶をたどって、もっとこんな楽しい時間を過ごすにはどうやって公園を選んだらよいのだろう? などの疑問が解けていけばうれしい限りです。
とにかく、遊具を作っている当事者のお話を聞ければ、これまで以上に濃い情報をお届けできるに違いありません。第一弾のローラー滑り台について、さっそくお話を聞けたのは株式会社ジャクエツ、遊具メーカーに聞いた公園遊具のこと! しっかり特集してみます。
ローラー滑り台の狙いはこんなこと(取材協力 株式会社ジャクエツ)
関東エリア各県の最長ローラー滑り台を、ひとつづつ紹介してきた「子どもと楽しむ公園」シリーズです。千葉県について最長となる千葉市昭和の森のものを見ると、忘れてはならないことが浮かび上がってきます。
それは事実上同じ場所にあるといえる、隣の小中池公園のローラー滑り台のこと。360度の旋回を3回も繰り返すこの滑り台、千葉最長のものに比べれば若干短いながら、とても特徴があるのです。
それは滑ってみたら明確に感じ取れたことです。「この滑り台には何か秘密がある!」と興味を抱かざるを得ない滑り味だったのです。
調べてみるとこのローラー滑り台を作ったのは遊具メーカーの株式会社ジャクエツだということが分かりました。この不思議な感覚はどこからくるのか、教えて欲しい! とお願いしたところ、快く引き受けて頂けました。
お話を聞いてみれば、さすがはローラー滑り台を代表する会社、そしてジャクエツの子どもにかかわる取り組みは、それに限らず多岐に渡っている事も教えて頂けました。耳寄りなこの情報をしっかりお届けしたいと思います。
【取材リポート】部材と構造を一新したことで生まれたローラー滑り台の新機軸
ローラー滑り台について詳しくお話して頂けたのは、株式会社ジャクエツ 牧野英雄取締役部長です!
フェンテ記者:
小中池公園のローラー滑り台、行ってみたのですがすごくよかったです。形からして珍しいですよねー!
牧野取締役部長:
あれは随分前に施工したものになりますね。ジャクエツでもどんどん改良加えていますので、最近のものはもっとよくなっていますよ。
フェンテ記者:
何といってもぐるりと旋回するのが、あまり見ない形ですね。とてもスムースな滑りなのもなんか違うなと!
牧野取締役部長:
あの形はジャクエツの部材を使わないとできないです。例えば隣りの昭和の森のローラー滑り台は、小中池公園のものと違ってなだらかなカーブのデザインでしたね? カーブをつけたら内外周の長さは当然違ってきます。小中池公園のものくらい曲がっていると特にそうです。それを解決しないといけないんです。
斜めにずらしただけでは隙間ができてしまいますからね。ローラー滑り台で指挟み事故などは厳禁です。それから、滑らかさ、静かさなどはベアリングの工夫が大きいです。ニードルベアリングを採用しています。サンプルがあるから触ってみますか?
フェンテ記者:
おお! ぜひぜひ。さて、ぐるっとなと! 滑らかですねー。こっちもあるんですか?(改良版のほうのサンプルを触ると…)うわ!こんなに違うんですか、全然抵抗を感じません。それと静かですねー。
牧野取締役部長:
ローラー滑り台や、ニードルベアリングも、特にジャクエツが最初に考えた訳ではないです。ローラー滑り台はすでにありましたし、ベアリングといえばよくイメージされるのは球状のものかと思います。それとは違う形状になるニードルベアリングもすでにあったアイディアです。
ただ、音がうるさくて不快だとか、ローラーの太さが適切でなくお尻が痛いとか、耐久性の問題だとかローラー滑り台には解決しなければならないことが一杯あったんです。
フェンテ記者:
そこを独自の工夫でここまで解決してきたと!
牧野取締役部長:
先行メーカーがやっていないことをやりました。というよりも世界でこんなに身近でローラー滑り台で遊べるところって他にあるんでしょうか? 少なくとも自分たちはお手本になるようなものは見つかりませんでした。
フェンテ記者:
確かに巨大かどうかは別として、多くの公園で遊具の代表のようにして設置されていますね。これが外国でもそうなのかというのは、ちょっと興味深いです。いずれにせよ、日本の子どもがローラー滑り台で楽しく遊べるのには、ジャクエツがかなり貢献しているのですね。
牧野取締役部長:
ジャクエツは幼稚園の運営から始まった会社で、子どもにとって最良の物を作ってきた会社です。滑り台を構成する躯体、部材を作るにしても、ローラーその他構造的な性能だけを追求した製品ではいけないと考えています。
遊具はメンテナンスも大切です。長く遊んで頂くためには、メンテナンスのしやすさも考慮します。例えば、大きな滑り台のローラーひとつひとつに、いつもメンテナンスで注油しなければならないようだったら、公園の手間は大変なものになってしまいます。
フェンテ記者:
確かにそれはそうですねー。ちゃんとメンテナンスがされていないのかな? なんて思えてしまう遊具だったらがっかりしちゃいます。
牧野取締役部長:
当社のローラーはメンテナンスがしやすい工夫をしています。そしてもちろん、今でも定期的にメンテナンスを行っています。小中池公園のものは平成8年に施工しました。けれども、いまだに何の問題もなく使えていますよね。ローラーにも、滑り台の躯体にも、耐食性に優れるアルミ素材を採用しています。これはまだまだこの先も、現役で快適に遊んでもらえる理由のひとつだと思います。
フェンテ記者:
確かに隣の昭和の森のものに比べると、見た目はこっちが古いんだろうなと分かりはします。その割にっていっては何ですが、滑りは全然古臭くないですね。
牧野取締役部長:
ローラーを改良するにしろ、滑らかで静かにするだけでなく、子どもがどんどん遊びたくなるにはどんな形状やスケールがよいのか、特に最終的な気持ちよさはどんなに計算しても分からないと思います。
そこでモデル園が大きな役割を果たしてくれます。関連法人の幼稚園、保育園で実際に使ってもらいながら、子どもの意見を聞けているのです。
そこから導き出した最適解は重要です。ジャクエツは子どもの体の大きさや重さから、適切なスケールは何かを実際に検証して把握しています。それがあるからこそ、子どもの感覚に寄り添うことができていると考えています。
フェンテ記者:
なるほどー、それは大切ですよねー。あの滑り心地が実現できているのには、そんな訳もあったのですね! 貴重なお話ありがとうございました。
(以上、取材レポートの内容となります!)
さすがの技が凝縮!の結果できたローラー滑り台のみどころ
取材レポートのきっかけとなった小中池公園のローラー滑り台は1996(平成8)年のものです。ジャクエツではよりよい、独自の魅力ある製品を生み出そうと、ローラー滑り台を改良する取組みを始めたとのこと。それは1983(昭和58)年に遡ることです。
実はジャクエツのローラー滑り台をもっとよく見るのは公園よりも、幼稚園や保育園など子ども関連施設。園庭は大型公園のような大規模な敷地はありません。そうであってもなだらかな傾斜でも楽しく遊べるローラー滑り台があれば、施設の魅力はアップ間違いなし。
それほど広くない園庭で長い滑り台を楽しんで欲しいと願うならば、敷地に限りがあっても急旋回できる技術が必要です。こんな子ども関連施設の要望と、ジャクエツの想いがもととなって支持されている特別な仕組みのローラー滑り台。
公園で採用される場合は、まさしくロングスライダーとなって実現しているのです。そうして、ひとつの到達点となったのが1992(平成4)年にできた福井県おおい町の総合公園きのこの森のビッグスライダー。規模はより大きいながら、小中池公園のもののまさに原型といった形をしています。
どこかの公園で360度急旋回するようなローラー滑り台を見掛けたならば、どうやらそれはジャクエツの作ったもののようです。そこには独自の工夫と技術が秘められています。ぐるりと旋回できることは当たり前ではありません。
またスムースさ、快適さは実証して確かめたもの。子どもこそがぴったりフィットして感じていることです。それがホントなのかどうかは子どもの様子から感じ取ってみてください。
ここに行ってみて!ジャクエツがおススメする公園はここ!
画期的な滑り心地を実現したローラー滑り台だけでなく、まだジャクエツおススメの遊具はあります。ならばどこの公園で遊べるの? というならば例えばここです。
壬生町おもちゃ博物館【栃木県壬生町】
吹き抜けホールに鎮座する壬生町おもちゃ博物館の主きんぐとくぃーん、展望ホールの幼児向け大型遊具みらいごうについて詳しくご紹介した記事があります。
川崎競馬場【神奈川県川崎市川崎区】
川崎競馬場の特注遊具かわさきホースライダーについてご紹介した記事はこちら。
西武百貨店池袋本店【東京都豊島区】
食と緑の空中庭園
富山県立美術館オノマトペの屋上【富山県富山市】
富山市の中心市街地の憩いの場であり、公共施設もいろいろ集まる冨岩運河環水公園。楽しみなら冨岩運河を岩瀬や中島閘門まで行くだけでなく、公園内を周遊してくれる冨岩水上ラインなどいろいろ。
ただし、遊具での遊びならば、園内の富山県美術館の屋上に設けられたオノマトペの屋上に集約されています。オノマトペの屋上はジャクエツの意欲的な遊具がいっぱい。
「子どもと楽しむ公園」シリーズでは抽象的なオブジェ系遊具と考える、発想を育む意図があるものが並びます。また、ここではシリーズで取材させて頂いた太陽工業のふわふわドームも共演しています。
ジャクエツってどんな会社!あの遊具を作るメーカーをご紹介!
全国の幼稚園や保育園の多くと取引のあるジャクエツ。その製品はとても専門性の高いものです。例えば子どもの遊び道具として一般的な三輪車。これもジャクエツが納品するもののひとつです。
とはいえ市販はされていないジャクエツの三輪車エルゴ。なぜなら園で不特定多数が毎日のように利用する前提で作られます。家庭用のものとは耐久性が桁違いです。
そして並外れた納入実績が物語るのは「実は意外に身近な存在」なこと。そんな実は… な教具のひとつにB-ブロックがあります。楽しいブロック遊びも小さな部材は誤飲事故を考えれば幼い子ども対象には不向きです。B-ブロックはそこを考慮した適度な大きさ。
ジャクエツで著名デザイナーと協業で、遊具の新しい可能性を考えるプレイデザインラボ。その研究を推進するジャクエツの赤石さんも「いつも遊んでいたあれがジャクエツのものだったことは、入社して始めて知ったことです!」と言います。
自らがこども関連施設を運営するために製品の実証の場モデル園があるのも強み。アルミ材の使用、子ども用トイレの開発など日本初の試みもさくさんある、こども環境におけるリーディングカンパニーです。
「こども環境の未来をつくる」ことが目標だというジャクエツ。今回お話が聞けた会社の概要をご紹介しておきます。
会社概要:
株式会社ジャクエツ
(一級建築士事務所、建設工事業、消防施設工事業、管工業、機械器具設置工事業を含みます。)
グループにて幼稚園2つ、保育園2つを運営
創業:
(早翠幼稚園、福井県敦賀市)1916(大正)5年
(株式会社)1949(昭和24)年
本社:福井県敦賀市若葉町2丁目1770
自社工場:福井県敦賀市、岡山県倉敷市
他、全73拠点で展開。お客様の近くで綿密にフォローする体制で営業中。
公式URL:株式会社ジャクエツ
連絡先電話番号:03-3442-2260
まとめ:ローラー滑り台の諸問題を改良した歴史、急旋回の実現が特徴
ジャクエツのローラー滑り台、実はどんな工夫をしているのか、驚くべき秘密があり詳しいお話を伺っています。けれども、遊ぶ立場からすれば重要ではないことです。大切なのは快適に楽しく遊べること。そして企業秘密にもあたるので詳細は書きません。
ただしこういった工夫によって、目を見張るような旋回が組みこまれたローラー滑り台が実現し、高いメンテナンス性によって公園管理者の負担は減り、子どもがいつも楽しく、快適に遊ぶことに役立っていることになります。公園管理者の方で詳細をお知りになりたい場合は、直接お問合せください。
「子どもと楽しむ公園」シリーズの特集でも、今回教えて頂いたことはしっかり頭に入れてゆきます。そしてどんな楽しさが秘められているのか、しっかりレポートしてお届けします!