インクルーシブなブランコが導入されて、この時点では新潮流に乗った! といえる恵比寿南二公園。東京都渋谷区、恵比寿駅周囲の繁華街を抜けてすぐの、住宅街にある小さな公園ではあります。
ハーネス付きで見るからに新趣向のブランコだけが導入される例があり、ならばインクルーシブな公園を実現する試みのひとつに数えられるのも事実。それでもそれだけではちょっと物足りない気もします。
鳴り物入りで登場した都立砧公園みんなのひろばの様子などを思えば、ブランコだけではことさらインクルーシブと強調するのもなんなのかな? とも思えるもの。またハーネス付きのブランコがひとつだけだと問題も起こり得ます。
その点、恵比寿南二公園については、インクルーシブ対応という点で、とても注目できるところがあります。子どもと遊びに出かけて「ここはいいな」と思える場所をご紹介しています。
ハーネス付きのブランコの導入に限らず、もっとインクルーシブな理念に合致していて、個性的でもある、ちょっと大型の遊具もあるのです。これなら誰もがみんなで遊ぶのにピッタリな機能を発揮しそう。
恵比寿南二公園は街区の人のための公園として、都市公園最小の参酌基準となる面積0.25ヘクタールにも満たない規模ではあります。逆にそうでありながら、他ではみたことがない遊具があることになります。
インクルーシブなものだけでなく古典的なユニーク遊具もあって、芝生も適度な広さできれいに整備されました。子どもの遊び場として、ずっと強く意識されてきたことも分る公園。
そして恵比寿南二ということで近くには恵比寿南一公園というのもあります。プレイパークに変化した恵比寿南一公園を視野にいれると、ふたつの公園は恵比寿ガーデンプレイスを訪れるついでに、ちょうどいいロケーション。
大きくはなくとも子どもの遊び場としての役割が主なものな恵比寿南二公園を、いつものように独自に撮影した写真を満載して、人気の遊び場へのお出かけに役立つようガイドします。
子どもが大型遊具で遊べる恵比寿南二公園をしっかり解説!
インクルーシブ遊具として、存分に機能できそうな大型のユニークなものがあります。さらにブランコはひとつがインクルーシブ対応。他にコンクリート製の斜面には趣向が詰められていたり、さりげなく小さな公園は遊びで溢れています。
インクルーシブ対応遊具を導入
案内図によるとロックスオールシーソーと名前のついた遊具が、渋谷区初のインクルーシブ公園にしよう! という意気込みで刷新なった際に、ブランコの前に置かれました。
ブランコも四連一基だったものが、ハーネス付きのバケットシートタイプのものと、吊り下げる鎖をロープにしたものふたつに変えてあります。鎖をロープに変更したほうは座板も柔らかめな素材に。
鎖での指挟みなどを防止しようという試みだったり、座板が転落などで戻ってきた時などのために素材変更する! ということなら、より安全性は高まっているはずで、だとすれば順当な処置。
ブランコを安定したものに変える試みでよくみるのは、座椅子タイプのもの。すっぽり嵌るものならば、すでに普及していることが多いものの、幼児向けに小さいサイズになっています。
ハーネス付きであれば、体形はより幅広く対応できます。活発によくある形のブランコを使いこなせる身体能力があれば、動きが制約されるハーネス付きはもはや、さほど魅力があるともいえないでしょう。
どこでも観察すると幼児や、ブランコを活発に使いこなすようなやりかたが好きでない場合ならば、ハーネスが相当安心感あるのか、独り占めが続くことも見受けられたりします。
ハーネス付きブランコは誰でも! という点では優れていても、みんなで! というインクルーシブ公園に欠かせない理念上では、運用上差し障ることもあり得ます。
重量も増して四点で留まっているバケットシートに固定されることで、自由自在に動けないこともあり、手助けを得てこそ豪快にスイングを楽しめるのは、健常者でも同じ。そうすれば刺激も強いのです。
幼児であればいっそう、誰かの手助けが前提なことがほとんど。そうした面白さの反面、恐らく値段も高いサポート付きバケットシートのブランコには、少々考えさせられる面もあります。
これが四連にでもなっていれば、独占しがちな弊害はなくなるのでしょうけれども、さすがにそうした例はまだみません。特にひとつだけだと、他の誰かが譲り合う様子をみることもできません。
そしてすべてのブランコがハーネス付きに変わるのも、遊具が持つ目的の中でリスクに対処する力を養おう! といったことからすると問題はあります。
その点ブランコでもカゴタイプのものは、だれでもみんなで遊ぶというインクルーシブな理念には、もっとフィットするものがあります。砧公園と府中の森公園では採用されています。
ロックスオールシーソーはハーネスはないバケットシートが四つ、中央のカゴの部分と連動して動くものです。一度に関われる人数といい、様々な遊びの強度が含まれることといい、かなり理想のタイプ。
体が安定するバケットシートも、最終的にホールドを確定するのは自分自身がバーを握る力。カゴの部分でなら、寝転がってでも動きを楽しめます。まさに多様な姿で一緒に遊べる遊具。
こうした大型のスプリングシーソーは、東京でインクルーシブ対応遊具のエリアを持っている砧公園と府中の森公園では違う形のものを採用しています。やはり中央部に横たわったり、介護者と一緒に乗れるだけのスペースがあるもの。
いちおう明確に支点があるところなどは、ロックスオールシーソーよりもシーソーらしいともいえます。ロックスオールシーソーについては、ぱっと見では構造が分かりにくいです。
要するに大きなスプリング遊具なのかなという感じ。いずれにせよ、どちらも支点を持って長さのある板や棒状のものの両端で、ギッタンバッコンするほどのアクションは起こせないです。
そうした運動性の高い遊びには至らないところは、インクルーシブな遊び方をする遊具だからこそ。目的が違うといえ、またそれが故に幼児や低学年の遊びに適している! ということにも繋がることになります。
都立の大規模公園で、インクルーシブ遊具への対応のパイオニアである砧公園や府中の森公園。対象とするのは市町村を越えた範囲からの訪問であるのに対して、恵比寿南二公園の面積は1889 ㎡に過ぎません。
渋谷区一帯どころか、本来周辺の街区内からの利用を見込んだ公園。インクルーシブ対応については、そうしたさきがけた大きな公園を、追いかける存在になりました。
古典的テイストの遊具も充実
遊び場をコンクリートで築いていくのは、やはり昭和テイスト。特に大型遊具は、もはやユニット化された遊びを、組み立てていくものになっています。
クライミングウォールでさえ、壁そのものがコンクリートでないものが今風。滑り落ちるようなものとは、上下で傾斜が逆のものだって登場しています。
恵比寿南二公園にある斜面遊具は、インクルーシブ対応の改修の際に、お化粧直しの補修と、機能の追加がありました。渋谷区でいえば、宮下公園にあるボルダリングで使うようなステップが付いています。
穴やコの字の丸パイプなどを手掛かりにしたり、別の面ではロープが掛けられていたり、多彩な手段が並びます。
ちょうど中央付近は、平滑な斜面になっていて、どうして欲しいのかはやや不明瞭。ことさらに、緩衝帯のようなところがあることからも、滑ってもいいよ! といった風情。
このコンクリート斜面の下は砂場のようになっていて、そのまま柵の中の砂場と繋がっています。砂場の横には動物スツールがあります。
緩衝帯も砂場も、砂が枯れている様子なのがやや気になるところ。砂場の囲いの中にはサンドテーブルがあります。砂をここに運んで遊ぶためのもの。
車椅子でも遊べるようにする、インクルーシブ対応が目的とのこと。なのでテーブル下まで車椅子を入れて手が届くような形状で、周囲も固めてあるのでしょう。
そういうこともあり、砂のありかは仕切られた中、狭い部分のはずです。この時の様子だと、もうちょっと砂を足したほうがよさそうです。
砂場の柵にはパネル遊具が2枚、内外どちらからでもアクセスできるものと、内側からだけ遊べるものが嵌っています。幼児の成長過程にぴったりなこういうものも、インクルーシブな素質が充分です。
動物スツールも命名からすると座るものなのでしょう。コンクリート製で、スプリング遊具を見慣れてしまっていると、跨ろうとは思わないかもしれません。
砂地の延長にあることからも、本来は跨ってもいいよ! という趣向? ただのベンチで済ますこともなさそう。いろいろ楽しんだもの勝ちです。
こうした砂地のあたりから、上段に位置するところには、南側の出入口と繋がる草地に穴開きな、まさにコンクリート製なプレイウォールがあります。
どうやって遊べと決めつけることは難しいです。もっとも、なんだか機能が明示されていないというのは、問題になることではありません。なにしろ遊具なのですから。
こうして南側の一角はコンクリートでできた、もうあまり出現することもなさそうな種類の遊具が並びます。だから古典的テイストで個性的ともいえます。
こんな公園のありかたは、同じようにさほど広い園地はない、けれども遊具が充実している台東区の入谷南公園と似ています。こちらにも今風なリニューアルをした大型複合遊具と、古典的なコンクリート製遊具があるのです。
石の山は遊具の古典的名作として名高いもので、なぜ評価されるのかといえば、遊びということが内包する自由さなどを、考え抜いた哲学が感じられるから。
恵比寿南二公園のコンクリート製遊具にもそんなアイディアの残り香は漂っています。入谷南公園よりも小さい恵比寿南二公園(半分ほどの面積)。この流れでいえば北区の飛鳥山公園に、こんなテイストの広い遊び場があって、巨大な遊具もあります。
なおざりな感じが否めない砂地の様子とは違って、隣の芝生は万全な状況。広さはさすがに大規模な公園とは違います。それでもちょっとしたボール遊びなどには充分。公園自体が幼児くらいを対象にするのがちょうどいい感じ。
親子でというには、なんら不足ありません。新たな恵比寿南二公園らしい、だれでもトイレ(多目的トイレ)も芝生の横で園路を整えたところにあります。
砂地のエリアと自由に思い切り遊べる芝生の傍らには、ピンクの豚の意匠となる手足洗い場があります。特に足を洗うにしても便利です。恵比寿南二公園は、ブタ公園と呼ぶ人がいるそう。
ピンクの豚は南側の入口付近に、ブタスツールがあります。さらに北側の入口の階段の両端にも、神社の狛犬の代わりのようにして据えられています。ブタ公園のいわれは明らかにこれら。
インクルーシブ対応の遊具は、公園中央になる芝生エリアの一角になっています。そして芝生エリアの北側、クローバーが敷かれたところに、さらに別の遊具があります。
スペースキューブはFRPでできた、鞍型の部分が組み込まれた方形の骨組を積んだもの。メーカーではジャングルジムを代替えするものとして開発。立体迷路とでもいえばやや大げさなのか?
規格では大小ふたつ、高さが3段のものと2段のものがあります。恵比寿南二公園にあるのは大きなほう。ジャングルジムの代わりというのだから、内部に入り込むだけでなく上にいくのも目的なはず。
鞍の部分は跨って過ごすのに最適。当然、最上部が目標になるのでしょう。そんなチャレンジも、落ちる穴がないので安全ということか? ただ上っていくにしても、ジャングルジムのようには機能しなそう。
これはこれでいいとして、3段である意味があるのか。2段と3段ではちょっとした車一台分くらい価格設定が違います。挑みかたの自由度も難易度も高い遊具。ともかくジャングルジムよりも新しい世代の遊具なのです。
近くにはクローバーベンチ。葉っぱの形のテーブルと椅子です。赤いところは穴があいて掴ったりする機能つき。さらに周囲にはベンチが多数。この付近は木が多く、木陰もできやすい模様。
北側の入口の階段を上ったところにはシャドーフラワーが立っています。これがベンチなどのある木陰ができるところの隣。
この場所にはしっかり日が当たるようになっています。花弁なのでしょう、とにかくオブジェが載せられたポール。そしてただ見上げてみるだけのものではないです。
下のハンドルのようなものを使えば、ぐるぐる回せます。操作感は少し重め、みんなで回して動かそう! というインクルーシブ遊具として作られているのです。
恵比寿南一公園はプレーパークにリニューアル
よく近所でみかけそうな遊具がいくつかあった恵比寿南一公園は、山手線を挟んで恵比寿ガーデンプレイスと対面するところにある公園です。ここもカフェもあるえびすどろんこ山プレーパークに生まれ変わっています。
公式サイト:恵比寿南一公園
ガーデンプレイスに隣接して大型遊具のある、景丘公園も合せて一緒に利用するのもいいです。もちろんこのプランで核になる恵比寿ガーデンプレイスそのものがリニューアルしたばかり。お出かけ先としてさらに充実しています。
関連リンク:恵比寿ガーデンプレイス
恵比寿南二公園を訪れるには(アクセスについて)
住所:東京都渋谷区恵比寿南2-11-1
連絡先:03-3463-1211(渋谷区役所)
山手線に東京メトロも交差する恵比寿は、駅周辺がそこそこ大きな繁華街になっています。それでも意外なほど近くにも閑静な住宅街があります。恵比寿南二公園があるのはそんな住宅街です。
【公共交通機関を利用する場合】
最寄駅:JR山手線、東京メトロ日比谷線恵比寿約550 m
恵比寿西口の繁華街を抜けて、カルピス旧本社のところから坂を少し上り、右折して坂を下るのが最短距離です。徒歩の場合、些細な違いだけの別ルートがいくつもあります。
最寄バス停留所:防衛省技術研究所(東急バス渋72五反田行大人220円)
バスを利用すると違う方向から坂を上ってたどり着きます。駅からバス停留所とバス停留所から現地まで200 m弱ほど歩くことになります。五反田からの路線沿いの方以外にはメリットに乏しい手段に思います。
ハチ公バス(渋谷区コミュニティバス)の恵比寿南1丁目停留所も直線距離は同じくらい。たどり着くには街路が入り組んでいることと、恵比寿駅最寄のバス停はカルピスのビルの辺りです。
これもハチ公バスの夕やけこやけルートの沿道の方でないと、使う意味はないかもしれません。この一区間だけを利用すれば、坂を上らずに済ませられます。ただ、坂を上りたくないのであれば、西口は帰路のみにすることで、下りるだけのルートは組めます。
恵比寿駅東口から恵比寿ガーデンプレイスに向かう、動く歩道(恵比寿スカイウォーク)で運んでもらい、アメリカ橋からは450 mです。行きはこの遠回りルートなら下りるだけで行けます。
【自動車を利用する場合】
駐車場:なし
地域のための小さな公園です。当然のように駐車場はありません。周囲にコインパーキングがないこともないです。それよりも恵比寿ガーデンプレイスにまとまった駐車場があるため、一緒に利用するならば自動車でも利用できそうです。
まとめ:白羽の矢が放たれて充実した遊び場
渋谷区でもインクルーシブ公園を作ってみよう! と考えた時に、どうしてなのか白羽の矢が立てられたのが恵比寿南二公園。住宅街の小さな公園は、そのおかげで遊び場として、身の丈に合わないほどの充実ぶりをみせています。
ここにあるインクルーシブな遊具をみると、想像しやすいのは身体的能力に障害のある方が、健常者と一緒に楽しめるというテーマ。ならば駐車場も作れないここが選ばれた理由がよく分かりません。
もちろんご近所にインクルーシブ公園が必要な方がいるのかもしれません。これから生まれるのかもしれません。だったらここまで来れない方は? という問いには、こうしたものをもれなく導入していくモデルケースだ! ということかもしれません。
ともあれ誰でも、そしてみんなで遊べる遊具が揃って、恵比寿南二公園でちょっと違いのある楽しみが得られることに違いはありません。
公式サイト:特にありません