公園で遊ぶ時に、やはり気になるのは遊具。いろいろな種類のある遊具は、それぞれ遊具メーカーや設置者の思いが、しっかり託されています。その想いを直接聞いてみたりすると、「遊び」に対するこだわりは本当に驚かされるほどです。
そうして工夫が尽くされ、世に現れたものをよくみて、実際使ってみて、考察をするとある程度の分類ができてきます。するとやはり、公園遊具に込められた願いも、さらによく分ってきます。そうして中には、定番としてすっかりお馴染みのものもあれば、ちょっと変わり種として個性を放つものもあります。
公園遊具の標準セットといえるものがあります。それは御三家遊具と砂場。さらに「子どもと楽しむ公園」シリーズが、独自に撮影した写真を満載してご紹介している、大型遊具があります。そこから、新御三家として発展形になったり、新潮流となるジャンルとして現れたり、いろいろな種類のものに進化しています。
そんな中で御三家遊具のひとつ、ブランコの発展形として位置づけられるだろうターザンロープについて焦点を当て、これまで特集したものを、いまある種類を通してまとめてみます。
ターザンロープの種類をしっかり考察!
アメリカ合衆国で書かれた小説と、それを元に作られた1918(大正7)年の映画を皮切りに、近年に至るまで数々のシリーズが作られているのが野生人ターザンの物語。
遊具のターザンロープは、ターザンが森の木々をロープを使って、ぶら下がって移動する有名なシーンの印象から名づけられたものです。アメリカ発祥のターザンながら、ターザンロープというのは日本での独自の呼び名。
例えば英語ではこの手のものはrope swing。いわゆるブランコはswingなので、ロープを使ったブランコと表現するものの、ある意味日本の遊具文化はとてもオリジナル。正確に言えば、日本で言っている遊具のターザンロープに該当する英語はないと云えます。その内tazan ropeという、日本語由来の英語が一般化する可能性さえあります。
典型的なターザンロープ、つまりぶら下がるロープがあって、そのロープが滑車によってロープウェイを移動するものは、いまでは多くの公園で目にするものです。移動は傾斜によるもので、発進時の勢い(スウィング)によって、滑空のスピードは違ってきます。
さらに各地の公園に設置されたターザンロープを見ていくと、変わり種のものを見つけることがあります。するとともすれば、当たり前に思っていたターザンロープという名前の持っている意味、ロープとは何を指すのかということを、改めて考えさせられるものだったりします。
ターザンがロープを移動手段とする時、使うロープはつかまっているものしかありません。つまりロープウェイが渡してあって、それを滑っている訳ではありません。だからターザンロープのロープとは、つかまることになる縄なのだろうと捉えるのが自然です。
ところがふと考えてみると、ターザンロープの遊具としての特徴は、ロープウェイを滑空することにあります。となるとロープは、ロープウェイの意味なのでは! と考えさせられるのは、変わり種のレールウェイのターザンロープがあるからなのです。
実際にはレールウェイタイプのものを、わざわざターザンレールと呼称する例は(特集してきた中では)見つかっていません。ですから、ロープがつかまる縄を表していることに違いはないことです。しかしながら、本質的にはロープウェイこそがターザンロープの特徴ということも確かなことです。
そのうえでレールウェイタイプに進化した場合、究極のケースと思えるのは無限ループになること。この点は一般的な一方通行のターザンロープと、対照的な特徴なのです。そこで大きな枠の分類としてロープウェイとレールウェイに分けたうえで、どこの公園でどんな遊び方になっているのか、個別の例をみていくことにします。
一般的な形はロープウェイ、そんな主流派の設置状況は?
ロープウェイ式のターザンロープは、大型公園では特に、それほど珍しくない存在といえます。そんな中で違いを見つけるとして、遊び甲斐に影響してくるものといえば、どのようにスウィングを始めるかが、注目のポイントになるでしょう。
基本的には傾斜を利用して遊ぶのがターザンロープ。だからその傾斜がどのようにつけられているか? に着目してみると特徴がはっきりします。大きく分けてみれば、そもそも地面が傾斜しているか、スタート台が設けられているかです。
スタート台があるならば、それがどんな状態で作られているかで、ターザンロープの持ち味は違ってくることでしょう。さらに場合によっては、並んで滑空できるケースもあります。ひとつのターザンロープに2レーンということもあれば、すぐ隣に並んでふたつあることもあります。並んである場合は、ふたつの仕様が違う場合もあります。
斜面タイプその1 都立舎人公園(東京都足立区)
周囲はどこを見ても平らな土地。起伏があるとしたら、この平らな土地を作ってきた荒川などの堤防くらい。人為的なものでなければ、坂はないはずの東京都足立区の舎人公園には、芝ソリ遊びにも利用される大きな斜面があります。
その斜面を活用したのが、舎人公園のターザンロープ。その傾斜度も大きなものといえるでしょう。もっともターザンロープの傾斜は、いたずらに大きくする訳にはいきません。特に終点近くで危険が生じるからです。斜面タイプとしてはこのくらいで、代表的なスリリングなものでしょう。
斜面タイプその他の例 ぐんまこどもの国、大師公園、木曽三川公園センター
思いっきり斜面を活用している例は、危険度を考慮するのか、あまり多い例ではないように思います。あっても極めて緩やかだったり、傾斜があるかないかよく分からない程度のものだったりします。それでもスタート台はない、もしくは支柱自体で微妙な高低差を設けているなどの例になります。
他に見られる斜面タイプの例:木曽三川公園センター、ぐんまこどもの国
斜面タイプその2 平塚市総合公園わんぱくひろば(神奈川県平塚市)
面白い特徴を持っている斜面タイプがあって、ゴールインタイプとでもいいましょうか。湘南ベルマーレの本拠地スタジアムがある、平塚市総合公園のわんぱくひろばには、終点が小さなゴールのようなもので囲まれている、ロープウェイと呼ばれるターザンロープがあります。
いずれにせよ、例として見られるのは単レーンのシンプルなタイプばかり。自然落下の力がかかる斜面タイプでは、接触などの事態を避けたいと考えるのは妥当なことです。
スタート台タイプその1 ネーブルパーク(茨城県古河市)
斜面に置かれるターザンロープは、自ずと下に向かって行きます。平地に置かれるタイプは、高低差がなければ滑走できないため、スタート台を設けることになります。
このタイプはもっともよく見るものでしょう。ところがまったくこのタイプそのものながら、珍しくも豪快な例があって、それが大注目なのです。
ネーブルパークのターザンロープは、超大型アスレチック風遊具に組込まれた、大型かつ高さもあるものです。高さがある故に滑空路の下には、保護ネットが張られています。
もうひとつの珍しい特徴はスタートだけでなく、ゴールも台の上ということでしょう。まさに、空中を滑ることが意図されています。スケールがとても大きいのです。
そしてターザンロープの宿命、滑りだすためには誰かが滑ったロープを、スタート台まで運んでいかねばならない! という過程でも空中のネットを渡ることになります。規模もアスレチック感も格別なものになっています。
スタート台タイプその2 千波公園 少年の森(茨城県水戸市)
単レーンでスタート台タイプという、一見ごく当たり前の仕様ながら、千波公園(偕楽園公園)のターザンロープはスタート台に工夫があります。ターザンロープは傾斜で自ずと滑空するようになっています。
ただスタート台でいかにスウィングするかで、滑り出しは随分違ってきます。そのスウィングの具合を調整しやすいように、斜面にしてあります。ターザンロープの本質を、よく理解した仕様だといえます。そうでありながら、このタイプのほうが稀な例でもあるのです。
スタート台タイプその3 木曽三川公園カルチャービレッジ(三重県桑名市)
同じように最初のスウィングに工夫の余地を残したスタート台なのが、カルチャービレッジの海の遊具に組込まれた方のターザンロープです。ちなみにここには、ごく一般的なターザンロープも別にあります。
スタート台は階段状のものではなく、ちょっとした小山のようになっています。蹴りだし方向に幅がありますから、どんな滑りをするのか選択の余地があります。その上でそのトライがとてもうまくいったり、いまひとつだったりすることでしょう。
スタート台タイプその4 五十部運動公園(栃木県足利市)
そういった観点からすると、五十部運動公園のターザンロープはスタート台ではなく、ほんとうに小さな丘を築山しています。スタートの自由度という点では素晴らしい仕様だといえます。
2レーンタイプその1 龍神の杜公園(長野県御代田町)
龍神の杜公園のターザンロープのように、2レーンタイプのものがあります。ふたりで一緒に滑れるということで、楽しみも倍増以上ということです。この公園に設置してあるのは、とてもゆったりしています。だからこそスタート地点が2段階になっているのでしょう。
2レーンタイプもみながこんな幅のものではなく、もっと狭いものもあります。それに従って傾斜もゆるく短くなるのは当然といえます。そして2レーンで作ったものでも、やはり片方を廃止して、単レーンになっているものもあります。
他にみられる2レーンタイプの例:
中井中央公園 笠間芸術の森公園 とちぎわんぱく公園 湯川ふるさと公園
並立タイプその1 あかつき公園(東京都中央区)
ひとつのターザンロープに2レーンの場合には難しい、違う仕様を並べることも、ふたつターザンロープがあるなら可能です。あかつき公園の場合は、直列で並ぶものが仕様違いになっています。スタート台の高さと長さが違います。
並立タイプその2 富士川クラフトパーク
富士川クラフトパークでは並行しているのでなく、滑走先がV字になって違う方向に進みます。
並立タイプその3 千葉市昭和の森
もちろん必ずしも違う仕様で並ぶ訳ではなく、並行してかつ同仕様の場合もあります。千葉市昭和の森の場合はこのケースです。並んで滑る時にふたりは同条件な訳です。
並立タイプその4 愛宕山こどもの国
同じ仕様で並行に設置されながら、向かう方向が互い違いになっているものもあります。愛宕山こどもの国の場合は、一緒にスタートすれば、途中のどこかですれ違うことになります。
着座タイプその1 戸田川緑地とだがわこどもランド(愛知県名古屋市)
単レーンのシンプルなものといっても、変わった特徴があり侮り難いものを見てみましょう。戸田川緑地とだがわこどもランドの遊具回廊に組込まれたターザンロープは着座式。ロープの先に留められた珠に座って滑走します。
注意書きには立って滑らないで欲しいと書いてあります。仕様として座るタイプになります。戸田川緑地には、同じとだがわこどもランドの児童エリアや、中央地区左岸に単レーンスタート台式の一般的なタイプも用意されています。
ロープウェイ参考事例 こどもの森公園わんぱくらんどターザン広場の特徴
まったく変哲のない単レーンスタート台式のものながら、ロケーションが生きる例もあります。小田原こどもの森公園わんぱくらんどターザン広場(神奈川県小田原市)では、終点の先から丘陵が大きく下っているため、飛び立つような滑走が楽しめます。
ロープウェイ参考事例 笛吹川フルーツ公園アクアアスレチックの場合
こうしてみると、ロープウェイタイプはレールウェイタイプに比べると、構造もシンプルなこともあり、迫力では及ばない印象になってしまいそうです。この点注目したいのは笛吹川フルーツ公園(山梨県山梨市)のアクアアスレチック。
ロープウェイタイプでも、かなり豪快な遊び方になるものもあります。ただし、滑空するものではなく、渡されたロープを手繰って推進するものです。ですからもはやターザンロープとは呼べません。名前もイカダ渡り、籠渡りの一種です。
ただ、このような籠渡りのロープウェイで空中を移動するものは、事故の事例があり各地で撤去が進んでしまいました。籠が水上で抵抗が大きい故に危険性が減り、生き残れているのでしょう。ターザンロープの考察としては参考事例ながら、ロープウェイにはこんな遊具もあります。
変わり種となるレールウェイタイプの設置状況は?
主流派のロープウェイタイプに対して、とても珍しい例になっているレールウェイタイプ。こうするからにはという特徴となるのが、一方通行ではなく周回型ということです。
観察すると巧みに設計されたレールの角度によって、ぐるりと1周を回ってスタート台に戻ってこれるようになっています。順番待ちの都合などを考えないで済むならば、レールウェイタイプで周回路になっているものは、無限ループといえる状態。
こんなダイナミックな例となる遊具はどこにあるのかご紹介します。周回タイプがふたつ並んで設置されていたり、ロープウェイタイプと並んでコンボで楽しめたり、さらに加わる特徴もあったりします。
もっと稀な例となるレールウェイタイプもあります。レールウェイタイプというだけでも珍しいことなので、それらも網羅しておきます。
レールウェイ周回タイプその1 八幡山公園アドベンチャーU(栃木県宇都宮市)
アドベンチャーUではスタート台が隣り合わせで、おのおのがぐるりと一周回って戻ってくる仕組みです。巧みに仕組まれた傾斜とローラー式の滑車が、周回を可能にしています。
順番待ちがある場合は、譲り合わなければならないのは当然。けれども、空いている時なら連続でチャレンジや、隣の子ども同志で競争だってできます。
レールウェイ周回タイプその2 あいち健康の森公園芝生広場(愛知県大府市)
あいち健康の森公園のレールウェイタイプも仕様は同じ。ただ、こちらの場合は隣に設置してあるのは、一般的なターザンロープ。とはいえ、進化形とコンボで置いてあるだけでも、そうそうあるパターンではありません。
レールウェイ周回タイプその3 駅南公園(静岡県藤枝市)
藤枝駅からすぐ近い、駅前公園といえる便利な駅南公園。ここにあるレールウェイ式は、単独のものです。レールウェイをローラーで滑走するのは同じ仕様です。ただ両サイドに台を設けた周回式な点が少し違います。
レールウェイタイプその1 塩山ふれあいの森総合公園フルーツパラダイス(山梨県甲州市)
レールウェイであっても、一方通行で戻ってくるコースではないです。またロープの先には珠がついていて、着座でも滑空できます。塩山ふれあいの森総合公園の場合は、珠の上に立ってみるのも、難易度は高いながらひとつの方法のようです。その分コース取りはゆるやかなS字を描くのみです。
レールウェイ参考例 観音山公園ケルナー広場KANNONYAMA MINI(群馬県高崎市)
ターザンロープというイメージからは大きく外れて、乗り物そのものなのが、ケルナー広場KANNONYAMA MINIのたまごロープウェイ。けれども、この乗り物は無料です。そして小さな子ども専用。乗せて動かしてあげるのが基本です。これはブランコで背中を押す遊びの、直接の進化形です。
レールウェイ参考例 荻野運動公園冒険デッキと陣屋コンビネーション(神奈川県厚木市)
レールウェイの遊具について触れたならば、これもターザンロープがテーマならば参考遊具になる荻野運動公園のかごわたり。この刺激度高い絶滅危惧種の遊具も、ご紹介しておきたいところです。大切に遊んで他では得難くなっている面白さをずっと堪能して欲しい遊具です。
ブランコの進化形として行きついた先はこれ!
さて、ターザンロープをブランコの進化形と位置付けるのは、吊り下げられたもので遊ぶこと、スウィングする動作が重要なこと、という類似性に基づいています。
スウィングについてはブランコでは座って遊ぶ時には、人が押してアシストすることもあります。ターザンロープでは少ない例となる、座って滑空できるタイプの場合、傾斜が自ずと動作を助けてくれます。
ただし、ターザンロープの楽しさを考えると、たち漕ぎでより力強くスウィングするブランコの状態に比定したい、ぶら下がるタイプが主になるのは、正常進化といえるでしょう。ぶら下がるタイプは遊びの自由度も高く、遊び方に工夫の余地があります。
そのためつかまるという動作がクローズアップされるターザンロープでは、まさに進化の過程で獲得した利点としてダイナミックさがあり、失われたものとしては立ち漕ぎの姿勢ということになります。
けれども、実はこのふたつを繋ぐ興味深い遊具だってあるにはあるのです。
国営武蔵丘陵森林公園森のアスレチックNo.21ブランコ滑車
「子どもと楽しむ公園」シリーズで、いろいろな公園をみてきた中では、ただひとつの例となるものです。ブランコそのものがロープウェイというブランコ滑車は、ブランコの進化の過程で、ミッシングリンクとも思えるものです。
国営武蔵丘陵森林公園では、ターザンロープはむさしキッズドームのエリアと、ブランコ滑車と同じ冒険コースにNo.8ターザン滑車と呼んでいるものがあります。どちらもひとつに2レーンあって、並んで滑空できるタイプです。
ただターザン滑車のほうが距離も長めで、スタート台も高く設定されています。むさしキッズドームのほうは支柱が金属製、ターザン滑車は木製という違いもあります。
まとめ:ターザンロープの刺激と面白さはいろいろ
こうしてみると、場所によってはかなり特徴のあるターザンロープがあることが分かります。時には時間も手間もかかるお出かけになるとしても、ぜひ体験してみて頂きたい遊具の種類は、ターザンロープだけでも多種多様なのです。